17. 始まらない夢の終り ページ17
「このクッキー、食べなよ。ほら、Aクッキー好きでしょ?」
「うん」
積み重なっているクッキーの山から雪崩が起きないように慎重に慎重に、一枚手に取る。
口に運ぶと、しっとりとした口触りで、私好みの食感で、目の上がじんと熱くなった。
私の好きなもの一つ一つを丁寧に覚えていてくれて、それがとても嬉しかった。
知識の神だから、そんなのは当たり前なのかもしれないけれど、自分は甘いものが苦手なくせに、私のために作ってくれるその優しさが大好きで。
「美味しい?」
「すごく美味しい。ありがとう」
きっと赤くなっているであろう目に気付かれたくなくて、うつむきながら言う。
「そっか。それはよかった」
今上を向けば、白澤さんの満面の笑みがそこにはあるんだろう。
それを満喫したいと思ったけれど、やはり泣き顔を見られることの恥ずかしさが勝って、視界に写るのは自分の膝だけ。
「Aももう、一人前になったんだもんね……」
一人呟くような声のトーンが聞こえてつい顔を上げてしまった。
「寂しくなるなぁ」
彼は笑っていたけれど、目は笑っていなかった。
しかしその目には見覚えがあった。
「私が出て行っても桃タロー君がいるじゃん」
女の人も、と続けようかとしたけれど、寂しそうな表情の彼に、そんな嫌味は吐けなかった。
続きます
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ラーミン。(プロフ) - 手品玉さん» ありがとうございます!期待にお応えできるように努力していきます! (2015年8月10日 17時) (レス) id: 99f7bb834b (このIDを非表示/違反報告)
手品玉(プロフ) - ラーミン。さん» それでも待ってます!頑張ってください! (2015年8月10日 13時) (レス) id: bbcea6223d (このIDを非表示/違反報告)
ラーミン。(プロフ) - 手品玉さん» 返事が遅れてしまい、すみません…。そうですね!それを考えていませんでした!これからはそうします!ですが、ネタがあまり思いつかないので、できるだけ更新しますが、毎日とはいかないかもしれません… (2015年8月10日 0時) (レス) id: 99f7bb834b (このIDを非表示/違反報告)
手品玉(プロフ) - ラーミン。さん» しばらく更新しないんですか...余計なお世話ですが、占ツクのアプリはお使いにならないのですか? (2015年8月4日 10時) (レス) id: bbcea6223d (このIDを非表示/違反報告)
ラーミン。(プロフ) - 手品玉さん» 前作でも今作でもコメントしてくださり、ありがとうございます!そうですか…!ではこれからもそう言っていただけるように頑張っていきます!! (2015年6月6日 23時) (レス) id: 9562c1173e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラーミン | 作成日時:2015年3月29日 1時