今日も社畜は探偵社で嗤う

番外編　大晦日な小泉 ページ22

「もーいーくつねーるーと おーしょーおーがーつー」

Aが歌い、聡司はびっくりしたようにAを見る。Aの瞳からはなにも感じられない。

「お正月にはー、仕事してぇー望月呪いーかけましょうー」
「…………紅◯でも見る？休憩しよ？」

社畜に休みなど無い。残念ながら、ここ何日か会社に泊まり込んでいるA。とうとう年がこすようだ。

パソコンが置いてあるデスクをいわゆる台パンし、保存を押してAは立ち上がる。そしてコンビニで買ってきたビールを二つ開ける。

テレビの電源を聡司がつけ、Aは折りたたみ式の机をテレビの前に置いた。
現在時刻午後8時。若干始まってから時間は経つが、まだ歌合戦は始まったばかりだ。

「………聡司!まってこのバンド好き!まって出てる!」
「……嘘やん!マジだ!俺このダンス踊れる！」

因みに作者の世界でもセ◯オワ様が歌っていらっしゃる。非情に素晴らしい。

聡司は浮かび上がり踊る。その切れの良さにAは舌を巻いた。いつの間に練習したんだ、と。

「24時見よ」
「あれ好きだわ」

あれは面白い。表情筋死亡万年社畜でも笑える何かがある。あとタイキックしてみたい。

そんなことを思いながら、ビールを飲む聡司を見る。彼はそこまで強いという訳ではないようで、顔が赤らみ、気分が良さそうだった。

Aは立ち上がり、少し悩んだが、デスクの中からある物を取り出し折りたたみ式机の上に置く。

「これあげる」
「ありがとー…………え？」

Aが何年か前に予約し、先程届いた限定物の食料である。

聡司はびっくりして何故？とでも言いたげな顔をしていたが、Aはそのうちの一つを手に取りそして差し出す。

「え？一人で食っとけよ。」
「…………今年もありがと。」

強引に手に押し込み、顔を背けるようにビールを飲むA。

「こちらこそ。………Aちゃーん、顔紅いよー」
「酒飲んでるからな」
「ザルの癖にー照れてるー？」
「…………」
「無言で発砲しないで」

あがる室温の中で、Aは会社も悪くないかな、なんて思う。
雪がちらちらと舞い降りるなか、二人の笑い声が響いていった。



今年の2カ月〜3カ月間有難うございました。受験頑張ります！同じ受験生の皆さんも頑張れ！
其れでは皆様、良いお年を。

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