今日も社畜は探偵社で嗤う

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聡司の目が見開かれた。小刻みに唇が動く。
その赤目に映るのは＿＿＿。

「あー、すみませーん。蚊がいたものでしてー。」

全員が無事に驚いたように突っ立っている光景だ。

Aは結論から言うと銃を取り出すのを踏みとどまった。自身の右手を思いっきり叩き、季節はずれな言い訳をする。

ここで怒っても損をするだけだ。打ったところで職無しになるのも明日の朝刊で”元有名女優、殺人の容疑で逮捕”なんて見出しが載るのは洒落にならない。

「うわ、痛そ………。」

聡司が呟く。Aにも聞こえなかった。

「とっ！とにかく、元は国木田さんと与謝野おねぇちゃんと太宰さんだったのに、
国木田さんと与謝野おねぇちゃんは任務でやれないから乱歩さんは国木田さんの代わりにやるんだよ！？
小泉さんだけそうするのはわがままだよ！」

何だよ与謝野おねぇちゃんって。
わき上がる殺意に耐えながら平静を保つ。耐えろ。ここで失業するのは良くない。

「そうだぞ！」
「やれよ小泉！」
「乱歩さんもやるんだ！お前だけ断るのは筋に合わないだろう！」

ギャラリーはいつものごとく湧き上がり、望月はやってやった！とでも言いたげな満足気な顔を浮かべる。
悪気はない。矛盾だらけの正義感、の表現の方がきっと近い。

「と言うわけで＿。」

太宰は近付いてきて書類をパサリとAのデスクに置く。

「頼んだよ。」

にこやかに呟き、デスクを離れる。それと同時にギャラリーも消え、Aだけが取り残された。

嗚呼、神なんてこの世に居ない。
いつも、人は不公平だ。

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