今日も社畜は探偵社で嗤う

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いつから不幸は始まったのだろう。
……………。嗚呼、そっか。生まれた頃からだ。







「……………、」

パラパラと書類をめくり、中途採用候補の三人の情報をみるA。
滲み出す不機嫌さは否めない。きちんと睡眠をとった後にしては顔色が悪い。うっすらと青白い頬に白い唇。それらが全てを物語っている。

「……A…」

聡司は半透明の足で望月の顔をひたすら蹴っているが勿論ダメージ及び不快感は無い。

Aは心を静めようと折り紙を取り出し靴を脱ぐがいつもより大分汚くしわの寄っている鶴が出来上がる。

お忘れかも知れないが、勿論中途採用のA含めるメンバー経路は本当ではない。
あくまでもAの性別を知りたいだけの調査であり大きな意味は無い。
Aの胃は悲鳴を上げているが。

「愛里咲ちゃんナイス!」
「太宰さんも凄いですあんな作戦思いつくなんて!」

コソコソと言い合う社員達にAは気付かない。ただ、自分の分の書類を黙々と死んだように片付けていく。
しかし、聡司には聞こえていた。

「こんの阿婆擦れとクソ社員が……！」

聡司にとってAは大切な存在だ。何年間も一人で彷徨っていた聡司にとって、唯一意思疎通できる存在。それが小泉Aと言う存在。

あの誰にも相手にされず、返事も返ってこないあのもどかしさはきっと誰にも分からない。少なくとも生者には。

「(でも……。)」

聡司は思う。

Aの方を見て、死んでも尚彷徨い続ける自分を思う。

あの子の未来の姿が俺なんだよなぁ。

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