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「あ、A、やっぱり休みじゃないよね？」
「なんで？」
「いや、剣持がAさんいなかったんですけどって今朝言ってたから」
「あー、教室には一応いたんだけどね。てかもう1人のAちゃんを探してたんじゃないの？」
お弁当の包みを開けながら自嘲気味に呟く。引きつった笑顔はすぐそこにいる彼には見えていないだろうか。
「え、あー、なるほどね」
「ちょっと待ってて。ごめん」
勝手に1人で納得して席を立って行ってしまった
何をしにどこへ行ったのか分からないけどとりあえずこの騒がしい教室でぼっちでご飯を食べるのは悲しいから早く帰ってきてほしい
「A、ちょっと来て」
「…は？」
まだかなーなんて呑気に考えていた脳があまりにも多い情報を整理しきれずにぐるぐると回っている
私に声をかけたのは剣持くんで、左腕を掴んでいるのも彼で、呼ばれたのは私、で？後ろを振り返ると友達がニコニコと手を振っていた
「なに、」
「なんで、そんなに自信ないんですか。もっと僕の彼女は自分だって言いふらしてもいいじゃないですか」
「私はクラスで浮いてるの。こんな見た目だし中身だし。Aは当たり前のように橘さんしかいないみたいな振る舞いで、私のことは名字呼び。こんな陰キャが剣持刀也と付き合ってますなんて公表したらどうなると思う？」
「僕からしたらAはAだけですよ。大好きな彼女」
「思ってもないじゃんそんなこと」
口から出る言葉に身を任せていたら急に顔つきが変わった彼。だってそうでしょ？"剣持刀也はAが好き"なんて噂、Aは私の方だって誰かに言ってくれたことあった？ないじゃん。そういうことじゃん。
「みんなに言いふらしたらAが嫌かなって思って言わなかったんですけど、やっぱり言った方がいいですね」
「あのさ、話聞いて…」
私の話を聞く暇もなく1組の教室へと手を引かれていく。何をしようとしているのか分かったけど、止めようとはしなかった。
「みなさん聞いてください」
お昼休みを各々自由に過ごしていた人達で騒がしかった教室が一気に静かになり視線が隣の彼へと向けられた
「僕の彼女は西澤Aだけです。」
かっこいいって思ったのも束の間、恥ずかしくなったのか逃げ去るようにまた手を引かれて走り出した
この先大変だななんて他人事のように思いながら刀也に連れていかれるまま教室を後にする
やっぱり私の彼氏は最強だと思う
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作者名：めろんぱん | 作成日時：2021年12月14日 23時
