【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ16)

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鍵 - kgm※ ページ16

ヘトヘトになりながら電車に乗る

ここ1週間はずっと遅くまで残って仕事をしている気がする

夜遅いからだろうか、俗に言う陽キャだろう派手目の高校生らしき制服を着た子達と酔っ払ったおじさんしか乗っていない

高校生がこの時間にいるのが普通なのか都会は

上京して3年目、要領がいいとは言えない私は定時で帰ることの方がめずらしかった

「はぁ〜、ただいま〜！」

ヒールは流石に慣れたけど、どう頑張っても疲れてしまうこの脚にもっと筋肉をつけないといけないのかもしれない

今日も自分の家に帰る。夜のエレベーターは気をつけなさいって誰かが言っていた気がしたからいつも階段で登るのだけど、2階で良かったとつくづく思う

上京前は最上階に住みたいとか夢見てたけど、お隣さんもいい人だしこの部屋を選んで良かった

ただいまにおかえりなさいが返ってくることは一人暮らしをしている人ならそう多くはないだろう
母親はや友達、彼氏とかが遊びに来ている時以外は

でもうちは違う

「あ、おかえりなさい。Aさん。帰っていたんですね。気づかなくてすみません。」

スラットした身なりの良い男性がエプロン姿で玄関通路へと顔を出した。彼はお隣に住んでいる加賀美ハヤトさん

引っ越して来てから直ぐに仲良くなったとても優しい方。幾つか年上なんだけど、詳しくは教えてくれない
しかも社長だとかなんとか聞いたことがある

「もうご飯できますよ。」

ハヤトさんはいつもうちにいる訳ではないからわざわざ連絡して帰る時間を伝えるようなことはしていない。でも家に着く頃には温かい料理を作って待っていてくれる

なんでこんなことになったのかは私もよく分かってないんだけどハヤトさんの方から提案してくれた記憶がある

元々ここのマンションに住んでいたわけではないらしく、私が越してくる少し前に何かのきっかけでこっちに引っ越して来たんだそう

「Aさん、何か考え事ですか？」

「いや、なんでもないです。」

「なんでもないなんてことないと思うんですが、さっきから話しかけても反応がありませんし、」

「え、本当ですか。ごめんなさい。えっと、何の話ですか？」

食事中は団らんの時間だ
それを害されるのを嫌うハヤトさんは私が別なことを考えていると少し眉をひそめる

「そろそろ同居してもいいんじゃないかと思うのですが、どうですか？」

「………はい？」

一目惚れだったと告白されたのが去年のクリスマス

流石に早過ぎないか