still ページ9
今日は何かがいつもと違った。
明るさや華やかさ、賑わいがいつもより足りないような気がする城内。
どこか表情が暗い翠の彼とほんの少し眉が下がっている紅の彼。
少し険しい顔で、何かを考えているような姿を見せる黒の彼。
一席空いている朝食の時間…。
この状況を見たら、言葉にしなくても分かる。
俺に自分の気持ちを伝えてくれた時少し寂しげな表情を浮かべていたのは、彼女自身こういう未来が頭を過ぎっていたのかもしれない。
原作通りなら、彼女が断られることなんて無かったはずだ。こういう時に改めて思う。やっぱりここは、魔法使いがつくった世界なのだと。
そうだとすると、もしかしたら第三者の介入も有り得るんじゃないかと考えてしまう。
仕事柄、幸いにも俺には知り合いが多い。虎の彼らの名前も前に聞いたし、他の人達がここで出てきても何ら不思議ではない。
そんな考えが頭をぐるぐると回っていたし、彼も話しかけられるような雰囲気をまとってはいなかったから、俺は静かに自室へと戻った。
途中、親切な侍女の方が手伝ってくれたけど、彼女もなんだか複雑そうな表情を浮かべていた。
…やっぱりこの城に勤める者として、この国で暮らす者として、あの二人が結ばれて欲しかったんだろうか。
そう聞けばきっと、この国の九割以上の人がそう答えるんだろうな。それ以前に、怖すぎてそんなこと聞けやしないけど。
パラッと昨日読み終わった本を開く。こんなに長くこの世界にいても、あの広すぎる図書館の本はまだ読み切れそうにない。
段々と感覚も狂ってきているのか、今この世界にいる時間が長いのかそうでないのかも自分では分からなくなってきた。
“帰りたい”と“帰らなければいけない”が別物だということに、やっと気が付いた。
果たして、俺は帰りたかったのか。それともただ帰るという使命感を持っていただけなのか。
現実世界での思い出に、少しずつ靄がかかってきたのを感じる。新しいものから、順に。
俺は、何で“彼”を好きになったんだっけ？…あぁ、違う。きっとそれに理由は無かった。気が付いた時にはもう、その気持ちを抱いていたんだ。
大切な宝物の数を数えるように、噛み締めるように一つずつ思い出を確かめていると
ｺﾝｺﾝｺﾝ
昨日よりもかなり控えめで、弱々しいノックの音が聞こえてきた。
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Ju(プロフ) - 玖黎さん» SNSしておられたらフォローしたいな…と思っておりました、IDが載せられないのでやはりしておられなかったんですね（;;）キリンのように首を長くして待っていたので読者として私も安心です。主さんのペースで、頑張り過ぎないで下さい。また感想綴りにきます^^ (2021年6月9日 2時) (
レス) id: daebecd63d (このIDを非表示/違反報告)
玖黎(プロフ) - Juさん» ありがとうございます、そのお言葉がとても嬉しいです！SNSをやっていない為リアルタイムで皆様の感想を聞けない分、不安もありましたが無事完結させることが出来て私もほっとしております。この先も、応援していただけると嬉しいです！ (2021年6月8日 20時) (レス) id: 02deec9f9d (このIDを非表示/違反報告)
Ju(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます！mmabの中で唯一待ち続け、更新中に何度も読み返し更新されては直ぐに読む！を繰り返した作品なのでとても嬉しいです。本編終了後も未だ続くと聞いて興奮が冷めません、とっても楽しみにしています！ (2021年6月8日 18時) (レス) id: daebecd63d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玖黎 | 作成日時：2021年2月7日 18時
