いつかのフィルムに (ページ24)

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そう甘くないページ24

(宏光side)

大学に入った時はこんなことになるなんて思ってみてもみなかった。

事故、半身不随、車椅子…

カメラの仕事をしたくなかったわけじゃない。

でも、きっと俺には他に可能性がいっぱいあったはず、と何度も後悔が募った。

彼女に再会するまでは……。

こんな姿でも、かっこ悪い姿でも、また彼女に会えたことが嬉しかった。

でも、現実はそう甘くない。

もしかすると彼女も俺も気持ちは同じなのにもしれない。

けれど、俺といれば彼女は幸せになれない。

今回の事故で眠っている間、何度も彼女が夢に出てきて、笑う彼女の隣には、俺ではなく藤ヶ谷がいた。

だから、目覚めた時、彼女が視界に入った瞬間、俺は決めた。

記憶喪失のフリをして彼女を忘れたことにすることを。

受付の人からお弁当を受け取ってあけた時、懐かしいあの日の記憶が蘇った。

甘すぎる卵焼きと、不揃いな大きさのウインナー、ご飯と海苔の割合があってないあの弁当を思い出して涙が出てきた。

でも、彼女にもう一度あって俺に何が出来ると言うんだろう。

俺は洗ってキッチンに置いたままの弁当箱を見て、ため息をついた。