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揺蕩う~玖~ ページ9

執務室に入ると、無人の其の部屋で、俺は強くAを抱き寄せた。


流れる透明な雫を指で拭って、Aに口付けた。


何度も向きを変えて、強く、長く、深く。


唇を離した時には、お互い息を荒らげていた。


其れでもAはうっとりとした表情で、俺の胸に擦り寄ってきた。


A「好きよ、中也。大好き」


中也「嗚呼。俺も、愛してる」


若しかしたら人が来るかも知れねェ。


けど今は、ンな事気にする余裕は無かった。


唯今は、半年の空白を埋めるように、互いの温もりを求めた。


まァ此処はマフィアの拠点だし、あんまハメ外す訳にゃいかねェけど。


A「ねぇ、中也。今日は一緒に帰れるよね?」


中也「当たり前だろ? と云うか無理でも帰るわ」


フッ、と笑ってそう云うと、Aは嬉しそうに目を細めた。




Aは元々俺の部下で、一応補佐の様な事を任せていた。


だから同じ執務室に居て、必然と一緒に居る時間が長くなる。


が、Aは俺や首領の指令で単騎任務に出る事もあったから、ちょくちょく居なくなってたけど。


A「ねぇ、中也? 此処に置いてあった棚はどうしたの?」


中也「ん? 嗚呼、ありゃ壊れちまったから捨てた。中のモンは全部其方の棚に入れ替えてあるぜ」


A「そっか...何か、変わったね。当たり前だけど」


何処と無く淋しげに微笑むA。


Aが居ない半年の間に、確かに変わった事も多い。


其れは俺からしたら些細な事でも、Aからしたら、居心地が悪ィのかも知れねェな...。


中也「今度、新しいの買いに行くか」


A「え...?」


中也「家具。丁度買い替えてェと思ってたんだよ」


其れは半分本音で、半分は俺なりの気遣い。


そんな事を知ってか知らずか、けどAは嬉しそうに笑ってくれた。

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作者名:ミト x他1人 | 作成日時:2017年9月1日 23時

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