ディストーションの隙間【黒バス】 (ページ23)

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「はぁ！？今度きせりょとお出かけすんの！？あんた興味ないって言ってたじゃん！」

『声が大きいってば……それにまだ行くかも決めてないし、考えてる最中の間違いよ』

クラスでも仲のいい方の彼女があまりに大きい声を出し、勢いよく椅子から立ち上がるものだから周りから注目を浴びる

前にもこんなことあったような…

「でも誘われたんでしょ？行くの？行かないの？」

幾分か落ち着いたのか、ガタリと木目のある床と椅子の先についたゴムが椅子特有の音を立てる

『分かんない……』

「わかんなぃ？」

私が言った言葉に彼女も訳が分からないと言った様子で言葉を反復する

そう、分からないのだ

行くか行かないのか

決めることが出来ないのだ

私は今までに選択肢を与えられた物を自分で決定した記憶がほとんど、いや全くない

全てあの忌々しい口が裂けても父親と呼びたくない男が作った用意された道しか歩いたことがない

自分の意志とは関係なしに既にもう用意されている
だから自分で決めることが出来ない
高校からの出前授業や合唱パート、はたまた演奏会の楽器も
全て彼女に合わせていた

「んぇえ〜………？じゃぁ質問変える」

ふと何かを思いついたのか、背もたれにぐでんともたれかかっていた彼女は前かがみになり、私の机に肘をついた

「行きたいか行きたくないか……これならアンタでも分かるでしょ？」

いわば感情の話

それならば…

『行ってみたいとは思うけど……いいのかしら？』

「いいに決まってんじゃん
良いからきせりょも誘ったんでしょ？じゃなきゃパンピーは誘わないわよ」

彼女の言葉に妙に納得する

確かに私も良くなかったら誘わない

が、しかし聞き慣れない単語を言われ、少し戸惑う

『ぱ、パンピー？』

「一般人ってこと」

なるほど、最近はそんな言葉まで出来ているのか

『な、なんて返事したらいいの…』

「え、あ、そんな所からっすかお嬢さん…」