運命? ページ5
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時間的にそろそろちょうど良い頃合になったので、花火が打ち上げられる河原に足を運ぶ。
やはりクリスマスだからか、カップルがたくさんいた。
『あ、そうだプレゼントあるよ。あげる』
「…さんきゅ」
いつもの花宮だったらお礼なんて言わないのに。クリスマス効果すげぇな。
箱を開けた彼は一瞬目を開くものの、すぐに元の表情に戻る。
彼はマフラーを箱から取り出すと「巻いて」と頼んできたので彼の首に簡単に巻き付けた。
「びっくりした」
『何が?』
「はい、俺からも」
『だから何が!』
意味不明なことを言う彼に困惑しながらも、綺麗にラッピングされた箱を貰う。
普段ならラッピングされていようと気にせず紙をビリビリと破いて開けるのだが、今回は花宮や周りからの視線を気にしてできるだけ丁寧に開いていく。
そこから出てきたのはマフラーだったのだが……、
『……え、っ』
「な?びっくりしたって言っただろ?」
『…まじ?』
そう、紫だったのだ。
マフラーの色がただ暗い紫色だっただけで何をそんなに驚く、と思うだろう。私だってそれだけならまだ良かった。
しかし問題はそこではない。
私も、一緒だったのだ。
私が花宮にあげたマフラーの色も、花宮が私にくれたマフラーの色も、同じ暗い紫色だった。
色も、形も、全て一緒。
違うのは男性用か女性用という違いだけ。クリスマスのプレゼントにマフラーが定番と言っても、ここまで被ることはあるだろうか。
『……う、運命ってやつ?』
「…偶然だろ馬鹿」
私自身も気分は舞い上がっていたが冗談のつもりで言った言葉に本気で返されると何も言えなくなる。
花宮は、私のこと好きじゃないのかな。
クリスマスにわざわざ2人で会うなんて気があるのかなぁ、とか思っていたけれどそんなことないのかな。なんて柄にもなく乙女心が傷ついてしまい凹む。
うわ。これじゃ面倒臭い女じゃん、私。
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作者名:春 | 作成日時:2023年5月19日 1時