ヒメユリコンペティション【ars/K.N&S.S】 (ページ5)

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和「勘弁してくださいよ……」

『ダメですよ？手ぇ出しちゃ』

和「出すわけないでしょ」

『ふふ。頑張ってくださいね。次の授業も。みんな二宮先生に興味津々ですから』

和「それは俺がここにきたばかりだからでしょ」

『そうですね。けど、嘘でもそんな風に聞いてもらえてるってことは、悪くないと思いますよ。だって無関心よりずっといいでしょう？じゃあ、失礼します』

和「あ、ちょっ……」

俺がまだ続きを言おうとしたのを聞かずに、A先生は、音楽室に歩いていく。

まぁ、確かにA先生の言う通り、無関心よりは良いかと思い直して、俺も準備室に戻った。

窓から少し離れてタバコを吸う。

そしたらまた校歌を練習してるピアノの音色が聞こえてきた。

和「うめーんだよなぁ、ピアノ」

滑らかで、穏やかで……今は校歌だから大丈夫だけど

授業がない時に、うっかりクラシックなんか弾かれちゃ寝ちゃいそうだ(笑)

時計を見てそろそろ次の授業に行く。

和「なんか元気出たから頑張ろー」

そう呟きながらタバコを消して、教室に向かった。

結局、一日中、同じような質問をされてウンザリだ。

まだ授業してないクラスもあるから、しばらくはこれか？と思ったら、余計に疲れた。

疲れたけど、明日の準備もあるから、あれこれしていると

辿々しいピアノの音色が聞こえてきた。

明らかにA先生じゃないピアノ。

生徒か？と思ってそちらに目を向けた。

翔「A先生？失礼しまーす」

音楽準備室のドアをノックすると、奥からA先生の声がしたから開ける。

『あぁ、櫻井先生！どうかされました？』

翔「お忙しいと思いますが、ちょっとお願いが……」

『はいはい、何でしょう？』

プリントを片付けながら、ふわりと微笑んで俺の方を向いてくれる。

相変わらず綺麗で可愛いなー。

翔「実は今度友人の結婚式がありまして」

『そうなんですね！楽しみですね！』

翔「そうなんですが、余興でピアノを弾いて欲しいとお願いされまして……。お手隙の時で構わないので、僕に教えてくれませんか？」

『あぁ、良いですよ！私で良ければ』

よっしゃ！

翔「ありがとうございます。あの、楽譜、これなんですが……。幼い頃ピアノは習ってたので、少しは出来ると……でもほぼ素人の僕にこの曲は弾けますか？」

用意しておいた楽譜をA先生に見せると、少し難しそうな顔。