白椿【ars/S.S】 (ページ18)

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こんなにも好きなのに。

こんなにも愛おしくて、切なくときめくのに離さないといけないなんて……。

今更Aに愛の言葉を並べたところで、逆効果なのが分かるから、言わないけど

こんな事になるなら、もっと言ってあげたら良かったなぁ……なんて後悔しても遅いよなぁ。

髪を乾かしあって、寝室に手を繋いで行く。

腕枕をしてやると、いつもと変わらず、まるで猫みたいに俺に擦り寄ってくるから、可愛くて仕方なかった。

もうこの仕草も癖になる程A一緒にいたのかと思ったら、切なくなって思いっきり抱き寄せた。

『翔さん、苦しい(笑)』

「……最後かもしんないんだから特別です」

自分で言った“最後”の言葉に猛烈に悲しさが押し寄せて、一瞬で飲まれて、溺れてしまいそうで

初めてと言っても過言でもないこの感情に、どうして良いか分からず、Aに覆いかぶさって、さらに強く抱きしめた。

『翔さん？』

「多分、最後だから……。しよ？」

『……余計に辛くなるよ？きっと』

「うん。けどAをちゃんと愛してたこと、あんまり恥ずかしくて言ってやれなかったけど、最後まで本気で愛してたこと、覚えてて欲しい」

『翔さん……』

「ごめん。もう黙って……？黙って俺の気持ち受け止めて？ごめん」

Aの艶のある聴き慣れた声が

鼻にかかる、舌たらずに漏らす声が耳にこびりつく。

何度も何度もAを呼んで、抱きしめて、キスをして

返ってこないとわかっていても、一方的でも、愛してると言葉と身体と仕草で伝える。

その頂点が訪れないように、1秒でも長く繋がっていたい自分勝手な俺は

いつもよりずっと丁寧に、そして焦らして、Aを愛した。

Aの小さな手が、必死に俺の腕を掴み、爪を食い込ませる。

この痛みさえ愛おしい……。

Aがその快楽の頂点に手を伸ばしかけた瞬間を狙って、また焦らす。

Aが俺を呼ぶ度、胸が締め付けられ

Aの名前を呼ぶ度、泣きたくなった。

最低だと分かってる。

俺が最後ということに甘えてるのも

こんなにも弱い俺をAが受け入れてくれたのも

全部、全部分かってる。

分かった上でのその行為は、虚無感と罪悪感に苛まれ

心に大きな大きな穴が開いた感じがした。

Aの言った通り、めちゃくちゃ辛い。

辛すぎで、頭も心も狂いそうだ。