27 お願い 安室side ページ29
トロピカルランドなら噴水は外せないですよ!という梓さんの助言を信じてよかった。
さっきまでは少し不思議そうな顔をしていたAさんも、今は噴水を見てひまわりのような、きらきらとした笑顔になっている。
にしても...
少し悲しそうな表情にしながらAさんを見つめる。
「Aさん...」
「はい?」
1分程だっただろうか、あれだけ勢いよく上っていた水はもう勢いを無くし、終えかかっていた。
「僕のこと、いつになったら名前で呼んでくれるんですか?」
Aさんはしまった、というような顔をした。
いっしょに夕食を食べに行った日、名前で呼んでくれと頼んだが、それ以来、名前で、そもそも名字で呼ばれる機会も減ってしまった気がする。
「すみません、その...覚えてはいたんですけれど、呼ぼうと思えば思うほど恥ずかしくなってしまって...」
耳まで真っ赤にさせて俯いてしまった。
なんだか、彼女をいじめてしまった、そんな気分だ。
「頑張ってこれから呼びます!
だから...私からもお願い、いいですか?」
おずおずと、そんな表現が似合うような感じで僕の顔を少し目を泳がせつつも見つめてくる。もともと小動物系の彼女が、本当にリスかなんかの、可愛い動物になってしまったようだ。
彼女のお願いを聞かないわけにはいかないので、相変わらず泳いだままの彼女の目を見つめ返した。
「えーと...敬語、やめてもらえませんか?」
「...はい?」
「ほら!私ってあむ...透さんより年下で、しかも後輩なのにずっと敬語で話されてるじゃないですか!
蘭たちにはたまに砕けた感じになるのに...だめ、ですか...?」
困った。非常に困っている。
Aさんの目は焦点を取り戻し、好奇心を含んだ色をしていて、そのお願いが叶えられるのを楽しみにしているのが伝わるのだが...
安室透、という人間になるにあたって、1番大きなスイッチになってるのは敬語、ということだろう。
安室の時に敬語だけ使うわけではないし、素の時に全く敬語を使わないわけではないけれども。
その大きなスイッチを彼女の前で無くしてしまって、素を出さずにいられるだろうか。
もし組織に、一緒にいて素でいるところを見られたら、まずいことになるのではないか?
「透さん!お願いします!」
腕を組んで考えてるうちに名前を呼ばれた。
偽名とはいえ...いい。
彼女は僕のお願いを聞いてくれたのに、僕だけ聞かないのは不公平か?
そう思い、僕は首を縦に振ってしまった。
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零(プロフ) - ギャグじゃない、ぴえんって、ギャグ大好き過ぎて草ギャグ大好きな人、好きです← (2020年5月8日 4時) (レス) id: 65b70f381b (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - アオさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。ご心配ありがとうございます。作者、生きてます。更新したのでよかったらまた読んでやってくださいませ。 (2019年8月8日 22時) (レス) id: 0b29ddadeb (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - のんのんさん» お返事が遅くなって申し訳ありません。応援ありがとうございます!中々亀さん更新になってしまうのですが...頑張ります!! (2019年8月8日 22時) (レス) id: 0b29ddadeb (このIDを非表示/違反報告)
アオ - はじめまして。この作品暫く更新されていませんが、大丈夫ですか? (2018年5月5日 20時) (レス) id: e874f23264 (このIDを非表示/違反報告)
のんのん - すごくいい話ですね! 応援してます! 更新頑張ってください!! (2017年5月7日 17時) (レス) id: 925f4d298b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リリィ x他1人 | 作成日時:2016年5月5日 17時