第85話『だいすき』 ページ40
走って、1本でも早く電車に乗って、また走って。
息が上がるし、内蔵が吐き出そうなくらい気持ち悪いのに私の足は止まらなかった。
そして、静かにベンチに座りながら大きな観覧車を眺める彼に体当りするように抱きついた。
ごめん、足がヘロヘロだ。
そう思いつつも、驚き身を固める彼に私は過去最大の笑顔を見せた。
『…た、だいま…っ陣!!』
名前を呼んだ瞬間、私はきつく陣に抱き締められた。
周りなんか気にせず、ただ存在を確かめ合うように。
全部、思い出した。
組織のこと、私が死んだこと、私の気持ちまで。
部屋に残ってた煙草と香水の匂いは、間違いなく陣のもので。
間接的に、毎日陣は近くにいた。…いてくれた。
涙が溢れてくる。
ぐす、としゃくりあげていると、陣は静かに細長い指で拭ってくれた。
そういえば、前トロピカルランドに来た時も泣いたなぁ、と思い出す。
陣は1回離れ、数分後何かを持って帰ってきた。
……あの時も買ってくれた、キャラメルポップコーン。
陣は静かに、前と同じようにただ黙々と私の口の中に入れた。
懐かしいなぁ、優しいなぁ。
陣の行動のひとつひとつが体に滲みていく様だった。
『ねぇ、陣』
『だいすき』
そう、私は涙が一筋頬に流れながら呟いた。
524人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ccndayo(プロフ) - はあ。。素敵すぎました。途中で涙が笑 (2021年1月6日 2時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
れいすみす(プロフ) - 幸せでした…尊いをありがとうございます…しゅき… (2020年5月26日 19時) (レス) id: 993cffbbce (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 涙がボロボロと、止まらなかったです…凄く良い作品、ありがとうございました…( ;∀;) (2020年5月4日 10時) (レス) id: c930be9ed1 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年2月12日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)mこれからも素敵なお話を作ってください!ジン様好き〜〜〜! (2019年11月23日 0時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あると | 作成日時:2019年6月25日 2時