第77話 ページ32
「っ、A…」
だけど、それ以降何も聞こえなかった為、私達は幻聴という事にした。
そして、静かに去っていく彼の背中を見ながら私は目を閉じ、また開いた。
涙が頬を濡らしていたのに気付いたのは、彼の背中が完全に見えなくなってから。
ねえ、あなたに会うと、凄く悲しい気持ちになるの。
真っ青な空を見て、私は静かに呟いた。
『工藤、新一…』
あなたの瞳にそっくりね。
***
そのあと、ポアロに寄った。
カウンター席でオレンジジュースを飲んでいたコナン君と食器を拭いていた安室さんが私を見て目を見開いた。
まさか来るとは思わなかったんだろう。
『こんにちは、安室さんとコナンくん』
なんで名前を、と言いたげな表情をする安室さんにそういえばもう昼だなと思い『ハムサンド一つお願いします』と言った。
困惑しながらもハムサンドを作り始めた安室さんを横目で見てから、私の手をぎゅっと握り祈るように私を見つめるコナンくんに向き合った。
そして私はコナンくんの耳元へ口を寄せ、『く ど う し ん い ち く ん』と呟き、驚くコナンくんににひっと笑った。
瞬間、コナンくんは涙を溜めて私に抱きついた。
ギャラリーが湧くのなんて知らないとばかりに、コナンくんはただただ「ごめん、ありがとう、すまねぇ」と繰り返した。
『…思い出したよ。こっちこそごめんね。コナンくん、大好き』
「っは?!」
率直な本心を並べればコナンくんはばっと肩口から離れ私の方へ向いた。
「…もう一回言ってくれる?」とぶりっ子をするコナンくんがなんだか懐かしくて可愛くて、『大好き〜!』と高校生ということも忘れて抱き締めた。
「もっと言って」と言うコナンくんに大好きと繰り返していれば、2、3回目でダァン!!とハムサンドを叩きつけた音がした。
いや、怖い。
「公衆の面前だよ?コナン君。」
にこにこと笑い、安室さんはカウンター越しに私たちを離れさせるとカウンターから出て隣へ座った。
『安室さんのゴリラパワ……んん、力の強さも変わってないみたいで安心しました』
そう笑えば、僕のことも思い出したのかと安室さんは強く抱きしめた。
よしよしと頭を撫でると、僅かに肩が上下するのが分かった。……泣いて、くれてる?
嬉しいなぁ…と思いながら撫でていると、いきなり抱きしめる力が強くなった。
「離れたこと、許さないからな」
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ccndayo(プロフ) - はあ。。素敵すぎました。途中で涙が笑 (2021年1月6日 2時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
れいすみす(プロフ) - 幸せでした…尊いをありがとうございます…しゅき… (2020年5月26日 19時) (レス) id: 993cffbbce (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 涙がボロボロと、止まらなかったです…凄く良い作品、ありがとうございました…( ;∀;) (2020年5月4日 10時) (レス) id: c930be9ed1 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年2月12日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)mこれからも素敵なお話を作ってください!ジン様好き〜〜〜! (2019年11月23日 0時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あると | 作成日時:2019年6月25日 2時