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第68話 ページ23

なに、なに、誰なの?





イケメンだったけど、すごく怖かった。
人違いだって言ってるのに、信じないし人前で店員さんがお客さん抱きしめるとか…しかも、きっと人気のある店員さんだった。女子高校生やOLさんたちが私のことをすごく睨んでた。




茜もいない、誰もいない。
電話帳には知ってる人がお父さんしかいなくて、一人だけ知らない名前の人がいただけ。


お父さんだってもう亡くなってしまった。携帯も解約したはず。じゃあ、だれ、誰なの?





恐怖が私を襲った。
私はもう立ってることが辛くなり、路地裏へ壁を伝って歩き出し、腰を抜かした。







『、もう、わかんないよ…っ!』






そう、泣き言を吐いたときだった。






「……誰だ」






なんだろう、





知らない声のはず、なのに








すごく、懐かしいような_______。






私が声の方へ視線をやると、暗闇から藤色のタートルネックを着た長くて綺麗な銀髪を揺らす男の人が見えた。




彼は私を視界に捉えると、手に持っていた煙草をぼたりと落としてしまった。






「……俺は夢でも見てるのか」






彼は静かにそう言った。



そして、私のすぐ隣に腰を下ろした。
汚れちゃうよ、と言おうとしたけど、彼のどこか悲しげで哀愁が漂う深緑色の瞳に見つめられて、何も言えなくなってしまった。





『、あなたも、私を知ってるんですか』





これは一種の掛けだった。

彼は一度私から視線を外し、新しいタバコに火をつけ一度吸った。




そのタバコの匂いもなんだか知っているような気がして、怖くなる。





「……昔愛してた女に似てただけだ」





そう言って彼は立ち上がり、また暗闇の中へ戻ってしまっていた。









私の頬が濡れているのに気づいたのは、彼が去った後だった。









いつの間にか朝起きた場所へ戻っていた。

あの人に会ったさっきから、何故か涙が溢れて止まらなかった。





なんで、こんなに悲しいんだろう。





なんで、こんなに涙が零れてくるんだろう。





なんで、こんなに__懐かしいんだろう。







訳がわからない私は、空腹も忘れてベッドに倒れ込んだ。








「………ごめんね、A」





夢の中で、お父さんの声が聞こえた気がしたーーーーーー。

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ccndayo(プロフ) - はあ。。素敵すぎました。途中で涙が笑 (2021年1月6日 2時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
れいすみす(プロフ) - 幸せでした…尊いをありがとうございます…しゅき… (2020年5月26日 19時) (レス) id: 993cffbbce (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 涙がボロボロと、止まらなかったです…凄く良い作品、ありがとうございました…( ;∀;) (2020年5月4日 10時) (レス) id: c930be9ed1 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年2月12日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)mこれからも素敵なお話を作ってください!ジン様好き〜〜〜! (2019年11月23日 0時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あると | 作成日時:2019年6月25日 2時

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