第49話 ページ3
私達が来店すると、もうコナン君は来ていて、安室さんももう上がるところだった。
はぁ、尋問か…もう無いと思ったんだけどなぁ。
重いため息が口から漏れる。
テーブル席の端へ行き、コナン君の隣へ座る。『こんにちは』と微笑むけど、いつものような天使スマイルはもう無かった。
それだけで泣きそうだというのに、沖矢さんはもう開眼して私を疑ってきている。3週間前くらいに戻った気分だ。
最悪。この言葉がぴったりなこの状況は、安室さんが来てもただ重苦しいだけだった。
『今日は、なんの話をするの?』
そう震えないように出た言葉は、予想以上にか細かった。
みんなの顔を見るのが怖い。…なんて、いつぶりだろう。
信じたときにまた疑いをかけられるのって、どっちが辛いのかなぁ。
「……っ正直に言うね。藤川Aさん、この戸籍が偽造されてるんだよ。あの場にいなかった昴さんが、解析したんだ。……すごく上手に作られてた。
ねぇ、Aさん。あなたは何者なの?」
なんで君がそんなに辛い顔をするの?
なんで、そんな苦しそうに声を絞り出すの?
「戸籍の偽造をしてまで俺達に本性を隠そうとは、それくらいの場所にいるんだろう?」
「……公安でもなく、FBIでもなく…それ以外の潜入捜査官でもない。…あなたは一体、誰なんですか…?なぜ、僕たちの名前を知っているんだ…」
赤井さんの口調をする沖矢さんや、前髪で顔が見えない安室さん。
『……ごめんなさい。あなた達を騙してたつもりはないけど。あはは、結果的にこうなっちゃうかぁ…』
辛いなぁ。この言葉はもう掠れて、多分誰にも届かなかった。
あはは、と笑いながら涙を流す私は、ひどく滑稽だったと思う。
辛くて苦しくて、吐きそうで、いっそここで正体をバラしちゃえばこの世界からもみんなからも逃げられるのかな、なんて弱いことを考えてしまう。
『1週間後、全てが分かる…あはは、…本当に、ごめんね。
大好きなの。みんなが。これだけは、本当なの…これだけが真実』
涙をどれだけ流しても、必死に笑顔を作った。
きっと、みんなは信じられないだろう。うん、分かってるよ、恨まない。仕方ないんだもの。
君らとはもう会えないねえ。
1週間後、これでもうこの世界に居る意味はなくなったんだ。
私は2つの意味を込めて呟いた。
『さようなら、安室さん、沖矢さん、コナン君。安室さん、ジンにさようならって言っといてくれますか、』
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ccndayo(プロフ) - はあ。。素敵すぎました。途中で涙が笑 (2021年1月6日 2時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
れいすみす(プロフ) - 幸せでした…尊いをありがとうございます…しゅき… (2020年5月26日 19時) (レス) id: 993cffbbce (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 涙がボロボロと、止まらなかったです…凄く良い作品、ありがとうございました…( ;∀;) (2020年5月4日 10時) (レス) id: c930be9ed1 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年2月12日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)mこれからも素敵なお話を作ってください!ジン様好き〜〜〜! (2019年11月23日 0時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あると | 作成日時:2019年6月25日 2時