第57話 ページ12
大の大人二人、子ども一人、女性一人が泣きわめく。
周りはシーンとしていて、誰一人として言葉を発さなかった。
男が謝る。もう、届きもしないのに。
女は語る。もう、誰もいないのに。
子供は押し殺す。愛を叫んだ。
どれだけの時間が経っただろうか、安室透の右腕はもうボロボロで、全治2ヶ月と見よう。
赤井秀一は静かに涙を流し、江戸川コナンは知り合いなんかに目もくれずにいなくなってしまったブルーシートの彼女が向かった先を何も言わず眺めた。
ギャラリーなんて、湧けない。湧けるはずがない。
彼女が残した便箋は、あと一つ。
それが届くまでは、あと5時間後。
****
安室side
右腕を応急処置されていたようだ。気が付かなかった。
泣きはらした目にも、包帯が巻かれた右手にも目もくれずに組織のアジトへ車を走らせた。
彼に渡したら、どうなるだろうか。
泣いてしまう?僕は撃ち殺される?……どうなんだろう。
何も考えられない頭で、片手に封筒を持ち彼の前へ出た。
ベルモットが驚いたような表情をする。何故、だろうか。
「……これを、彼女から預かっています」
見てください。と無理やり渡す。
右手がズキッと傷んだが、そんなの彼女の痛みに比べたらへでもない。
ジンも多少驚きながら封筒を開ける。
「……彼女は、亡くなりました」
「…………は?」
彼は手紙を読むのをやめ、僕にベレッタを向けた。
下手な事言ってんじゃねぇ。ふざけんな。そう脅されても、僕にはもう何もなかった。色も、周りも、世界も、何も見えなかった。
彼が地面に向かって3発撃つ。ダンッダン、という爆発音。
それを僕は静かに聞いていた。怯えることもなく、もう死んでもいいとさえ思った。
「……ッ」
ジンはそれが本当なのだと思い、コートを翻し闇の中へ消えていった。
「……どうしたのよ」
その手も、その目も。
「……ブルームーンが亡くなったんです。
観覧車を止めようとして、重機で突っ込んだ。重機ごと観覧車に押し潰され、その体は爆発で誰かも分からなくなってしまった…観覧車自体は、彼女のおかげで止まりました。
ねえ、ベルモット。」
なぜ、彼女が死なないといけないんですか
.
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ccndayo(プロフ) - はあ。。素敵すぎました。途中で涙が笑 (2021年1月6日 2時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
れいすみす(プロフ) - 幸せでした…尊いをありがとうございます…しゅき… (2020年5月26日 19時) (レス) id: 993cffbbce (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 涙がボロボロと、止まらなかったです…凄く良い作品、ありがとうございました…( ;∀;) (2020年5月4日 10時) (レス) id: c930be9ed1 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年2月12日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)mこれからも素敵なお話を作ってください!ジン様好き〜〜〜! (2019年11月23日 0時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あると | 作成日時:2019年6月25日 2時