急行 ページ43
***放課後
部活が終わり、天馬君達が片付けに走っていくのを木陰で見ていた。
夕闇の迫るはずの午後5時過ぎ。まだ明るい色は残っていて、暗くなりそうにもない。
しかし居た場所の所為か俺の周りだけ暗かった。木陰の所為だ、そう思いたいけどかき消す。
...焦っている。この上ない焦燥に襲われ、冷えた汗が気持ち悪さを増幅させていく。
Aさんが目覚めたらどうしよう。奪われることは目に見えている、今更足掻けない。
嫌なことは、決まって悪い時に脳裏を掠める。いっそのこと殺そうか。...できもしないくせに。
気を抜いたら、大声を上げて泣いてしまうかもしれない。崩れて、息を忘れるかも知れない。
俺は自分の足元を見つめ、力なく膝を折って座り込んだ。
「おい狩屋、狩屋！」
数分くらいぼうっとしていると、霧野先輩が軽く怒鳴るように呼んだ。
振り向いて見ると、確かに水色の瞳を光らせて俺を見下ろす先輩がいた。が、怒ってはいない。
「あー、えっと、裏門でお前を探してる人がいたぞ」
大急ぎで飛んできたらしく、話の内容がほとんど頭に入ってないらしい。
「名前...瞳子さん、だったかな。」
ばちっと頭に電流が駆け巡るように合致がついた。それと同時に、礼も言わずに走り出す。
数秒立たない間に先輩との距離はだいぶ離れた。それぐらい俺の体は軽かったのかもしれない。
【もう何もなくなってしまった、という意味合いで。】
他の先輩達を追い越し、風を無理矢理切り裂くよう懸命に何度も地を蹴った。
裏門が見えてきた辺りで一度振り向く。
ようやく口を開いた霧野先輩が、ぼうっと俺を見て何もなかったように、静かに笑った。
ばかやろ、帰ってきたらただじゃすまさないからな。急いで前を向き直して再度走る。
.
.
.
「...、あ、来た！」
裏門に着くと、嫌に冷たい風が吹いていた。涼しいかもしれないが、湿っぽい気がする。
その湿っぽい空気で呼吸しながら、前を見据えた。瞳子さんと玲名さんが立っている。
大丈夫か、と駆け寄る玲名さんとは対照的に、瞳子さんの目は俺からそれなかった。
やめてくださいよ、そんな薄情な瞳を向けるなんて。
「Aが...目を、覚ましたらしいんだ」
本人も驚愕に飲まれつつあるのか、途切れとぎれな言葉を繋いで口からこぼした。
わかっていたよ。別に知ってたわけじゃないけど、気づいてたんだ。
最愛の人へ、見えない嘘をついた。
「それは良かった」
【目が覚め無ければ。】
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
