二度の朝 ページ35
***翌朝
病室の真っ白いカーテン越しに聞こえる雨音で目が覚めた。
開いた視界には、厚い雲で覆われた暗い空を見せる窓が見える。
一度寝返りすると、ベッドの端に腰掛けている一郎太にやっと気づいた。
「わっ」
「おはよう」
彼はまるでいるのが当然かのように笑って、私の髪を何度か撫でた。
骨の浮き出た手に、指に赤い髪が絡みつくようにも見えて。
「雨、降ってるね」
ぼそっと独り言に近い声で言うが、彼の視線は一時的に窓へ向けられる。
数秒見つめた後、ゆらりと私に視線を戻し、横になっている私の隣に寝転んだ。
音もなく、さらさらの青い髪が崩れてベッドに広がって。
「お前といれれば、どんな日だっていいよ」
ずっと待ち焦がれてたからな、と付け足すと、少し悪戯に笑って体を近づけた。
シーツの擦れる音や、彼の大きな瞳がいつもより鮮明に見聞きできている気がする。
ドキドキするような、それでいて酔いしれているような、うっとりしたような気分に浸る。
彼の指先は、弱く私の唇に触れた。
「こうするのも、久しぶりだしな」
そんな綺麗な笑みを浮かべられちゃうと、こっちがどうしていいか分からないよ。
私は黙って頷いた。
.
.
.
「... ...はよー、ございます」
陽の光が入らず、いつもより少し暗い廊下を歩いてリビングに入った。
リビングには何人かの園児と、朝食を作っている瞳子さんが忙しそうに歩き回っている。
「あら、おはよう。その様子だと大分泣いたわね」
「やめてください、そんなに冷静に言うの」
思わず、自分の目元を隠すように擦った。
あの後、味もわからなくなるくらいご飯を詰め込むように食べて、自室に篭って泣き続けていた。
あの時ばかりは、まるで泣きたいという感情に振り回されているように自制が効かず。
結果的に深夜まで泣き続けて、疲れて眠ってしまった。
「泣いたことは何一つ悪くないわ」
正しいけれど... と言いたかったが、今の俺の中ではそれは間違いであってほしい。
こんなに誰かに恋焦がれて泣くだなんて、昔の俺が見たらどう思うだろうか。
驚愕することを超越して、呆れ返ってしまうに違いない。
「それとも、自分が情けないとでも思ってた？」
「...はい」
「そんなこと言ってる、今の貴方の方が情けないわよ」
ぴしゃんと閉じるような言葉だが、傷つくようで[確かに]と自覚してしまうような言葉だった。
... ...遅いような気もしたが、自分の欠点がやっと見えた。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
