時間 ページ36
「手術の準備はしてもらったから、二時間後に始めるぞ」
「...うん」
「怖いか」
「ううん、大丈夫」
自信を持って答えると、彼はニコッと笑って私の頭をぽんぽんと撫でた。
彼になら、不安な要素なんて一つもない。絶対に、大丈夫だって思える。
これで死んでしまったとしても、彼が殺してくれるなら私は本望だ。
それくらい、彼を愛している。それくらい、彼を信じている。
すると考えていたことがわかったのか、ぐっと顔を私に近づけ、ぴたっと止まった。
どきっとしたものの、唇が触れるまであと数センチなのに、止まってしまう。
「たまにはAからしてほしい」
ちょっと意地悪に笑う君。でも確かにいつも彼がしてくれると過信して私からしなかった。
そりゃそうだよね...最後とは思いたくないけど、手術前の気合入れみたいなものでしないとね。
でも、ちょっと久しぶりだから恥ずかしくて、私は目を瞑って顔を前にだした。
柔らかくて、温かい。懐かしい感触が唇を通して伝わってくる。
浅いキスだというのに、なんでこんなに満たされるような悦を感じるんだろうね。
... ...君だから、だろうけれど。
数秒もすると唇が離れる。ちょっとした冷たさに嫌悪感を感じつつ彼を見上げると
想像もしていなかったくらい、顔を真っ赤にして俯いていた。
「わっ、どうしたの」
「あー、あの、久しぶり、だったから、さ」
よほどだったのか、詰まり詰まり話す彼を、こらえることなく笑った。
あーやっぱり、大人になったと思ったらまだまだ可愛いところあったよ。
する前までは余裕ぶって、意地悪な顔してたくせに。
「笑うことないだろ」
つん、とした瞳で私を睨む。ただその綺麗な顔は、睨まれても至極美しい。
簡単に言えば全然怖くないのだ。
「ごめん。でも手術が終わったら...」
「キスで済ませてやらないからな」
今度は私から、彼の頭を撫でてみた。心地いいほど柔らかな髪の毛からは、良い香りがする。
この待たされた数年間を、全部返上してくれなきゃヤだよ、一郎太。
プレッシャーになっちゃうから、そんなこと言わないけどね。
君が救うだけじゃだめ。このキス以上のことをしてくれなきゃ、寂しくて辛いんだ。
「名前だって、俺のものにしなくちゃいけないんだから」
「名前？」
「だって、風丸Aになるんだろ」
やけに自慢げに語る彼に、なんだか安心した。そうだ、名前も変わるんだった。
いつか君と同じ名を名乗るんだ。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
