瀬戸際 ページ25
***翌日
「もうそろそろ時間だが、大丈夫か」
玲名の問いに、私は頷いた
もう準備は万端で、これ以上何がいるんだと聞かれてしまいそうなくらい。
部屋を見渡しても、もう心残りもなにもない
それはそれで、引き止めてくれるものがないのは少し嫌だけど。
「...A。」
一度肩を叩かれ、玲名に視線を戻すと小さな袋を渡された
柔らかなチャックのついた袋に、何錠かの白い薬がころころと入っている。
流石に薬を飲み慣れてる私でもそれが何かわからず、顔を上げると
「私に医学に関しての知識はないが...風丸に聞いてから使えばいいだろう
夜のお守りだ」
その口ぶりは睡眠薬かよ、と私は心の中で苦笑しながらもそれを受け取った
でもまぁ、不安で暗い夜を一人で過ごす事以上に怖いことなんてない。
あの時限りは、自分自身死んでしまっているような気もするから。
「ありがと」
「ああ...そうだ」
玲名は、床に置いてあった衣類の詰まった重そうなバッグをひょいと持ち上げると
私をもう一度見てからドアの方へと視線をやった
「狩屋に何か言っといてやったらどうだ」
「... ...うん」
正直気が進まない。きっと彼に嫌な思いをさせるに違いない。
荷物を車に積みに行く、と玲名は呟いて部屋からぱっといなくなってしまった。
毛布から足を出し、ひんやりと冷たい床に下ろす。
.
.
.
ぶーん、と扇風機の風が髪を揺らした。
二日連続熱にやられた俺の身体は、後悔と自虐的な叱咤によってまたグダグダしている。
机に入っていた椅子に座り、足に風を当てる。涼しくて気持ちいいが、それどころじゃない。
Aさんはもう車乗ったかな。見てないからちっともわからない。
冷たい机に頬をのせる。独特の木の香りと部屋の微かな匂いで気分が落ち着いた。
もう帰ってこないのか、なら何で伝えられなかったんだ、と
何度も何度も同じような事を考える。
コンコン。
あの無機質なノック音が、ここでも聞けるとは。
想像もしていなかった出来事に、思わず肩を震わせた。
すると、返事も待たないうちに細くドアが開いて隙間から廊下の光が差し込む。
長い赤い髪に、緑色の瞳。
その時は自分の心と体が直結しているかのように、あ。と声が漏れた
「ちょっとだけ...いい?」
嫌なら...と続けようとするAさんを、無理矢理部屋へ引きづりこんだ。
さっきまで座っていた椅子に座らせ、俺自身もベッドに腰掛けた
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします!よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます!もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます^^ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時:2014年9月20日 20時