朝早くに ページ12
***朝
まだ光の差さない、暗くて涼しい早朝。
夏といえど少し肌寒く感じるほど、冷酷な温度が部屋に居座っていた
昨日の手術の話のせいか、酷く胸が痛んで眠れなかった。されど今は眠くない。
布団へもう一度潜り込む。自分の熱で温まった布団は意味もなく俺を慰めた
ああ、なんて億劫な朝だろう。こんな朝久しぶりだ。
「...」
息を細めてからぎゅっ、と目を閉じる。
昨日存在することを嫌がった俺の心臓は、せわしなく声を上げていて
引き裂いて枯渇させるはずだった血液は、俺の全身を巡っている。
そもそも俺は何で、自分であることを否定したかったんだろう？
どうあがいたって自分は自分で、あの人が愛してくれるのもこの俺なのに。
「...起きてるかな」
不意な寂しさに負け、ベッドから抜け出して布団を直す。
時計を見ると、5時半過ぎ。決して良いとは思えない時間だ。
それでも何故か[やめよう]とは思えず、そのまま部屋を出て階段を降りていった。
.
.
.
「...」
一回、Aさんの部屋のドアをノックする。
木製の音が廊下に響いて消えていき、無意味な緊張感を募らせた。
[...マサキ君？]
ドアの向こうから小さく声が聞こえる。紛れもない貴方の声で。
眠れなかったんだろうか。そりゃ手術するのはAさん自身だし、当たり前か
そっと音が鳴らないようにドアを開けて中に入る。
「...おはようございます。」
「あぁ、おはよう...」
ベッドの上に横たわるAさんは、酷く考え込んで疲れた顔をしていた
話を聞くと、昨日のことを考えていたら一晩ずっと眠るほどの余裕がなかった、とのこと。
「...マサキ君も眠れなかった？」
「ええ...まぁ。」
「そっか...なんか、ごめんね」
「謝られたって困ります。Aさんの所為じゃないのに。」
そういえども、Aさんの表情は曇っていて固い。
無理に笑おうとしているのだろうか、少し苦い微笑みを浮かべている。
「Aさん」
「何？」
「...怖いって、言ってもいいんですよ？」
「...」
「たった一人で苦しんでいたって、しょうがないと思いませんか
...たまには、辛いとか痛いだとか、言ってもいいんですよ。」
「...ありがと」
それだけ言うと、Aさんはどこか悲しそうに、それでいて嬉しそうに笑った
きっと心のどこかで、この言葉を待っていたんだろう。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
