56.グレースの部屋 ページ8
・
__その後
ピンガさんに連れられ、
おそらくブイのハッチと思われる場所に入った。
『・・・』
水が引いていく中、
彼の姿をゴーグル越しに見つめる。
「…声出すなよ」
『う、うん』
彼のもの思われるウェットスーツを私が借りたせいで、ピンガさんの黒スーツがびしゃびしゃ。
…やっぱり優しいんだ、この人。
『どうして助けてくれるの?』
ウェットスーツを脱いで、濡れた髪を拭きながら
コソコソとグレースの部屋に戻る私たち。
ピンガさんは相変わらずびしょ濡れのスーツを着たままで、それなのに私にタオルを貸してくれてる。
「どうしてって言われてもな…」
困った顔をしながら、
グイッと顎の水を拭ったピンガさん。
シャツが肌に張り付いていてなんか色っぽ……
じゃなくて。
『あの、』
「…?」
彼がグレースの部屋の鍵を開けている中
小声で声をかけた。
私が思い出していたのは同僚の直美の事と、
彼が連れてきたあの女の子。
「入れ」
『…はい』
廊下には誰も居ないと分かっていても、
私の姿をスーツで隠している。
こんな風に完璧主義そうな彼のことだから
防犯カメラとかも遠隔で色々いじってるんだろうな…
「で?…俺に聞きてぇことあんだろ」
スーツを洗面所にあるカゴにぐしゃっと投げると
ワイシャツのボタンを開けながら首を傾げた。
そのアングルかっこいいけど
目のやり場に困る…
『その前にお風呂入った方がいいんじゃ…』
「……。ならお前が先に入れ
その後で俺が話せるとこまでは話してやる」
『あ…はい
ありがとうございます…?』
「ふ…なんで今更敬語なんだよ」
この人はどこまでも私を優先にしてくれる…
その意図は読めないけど
心が暖かくなる。
彼の前を通り過ぎてお風呂場に向かうときも
無性に心臓がドキドキした。
(あの胸板触ってみたいな)
…なんて考えてる事は絶対
ピンガさんにはバレないようにしないと…
恥ずかしくて話どころじゃなくなってしまう。
「(全部声に出てんぞ…)」
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哀愁(プロフ) - 続き楽しみにしてます! (5月7日 22時) (レス) @page33 id: 4b362b9d0f (このIDを非表示/違反報告)
MEIKA(プロフ) - 一気に読み終わるくらい素敵な作品でドキドキが止まりませんでした!!更新待ってます! (4月22日 5時) (レス) @page33 id: 1bb6835bc2 (このIDを非表示/違反報告)
あ - めっちゃ好きです!更新待ってます! (2月24日 18時) (レス) @page33 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
ノア - 更新楽しみにしてます……!!この作品ばり好きすぎてほんとに一生リピってます( ߹ㅁ߹)頑張ってください! (1月14日 23時) (レス) @page33 id: 76976485fa (このIDを非表示/違反報告)
いぎ - 更新楽しみにしています!大好きな作品なので待ってます! (12月5日 22時) (レス) id: 0fab079a1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:缶コーヒー | 作成日時:2023年8月15日 17時