73.思い出の消滅 ページ25
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エレベーターは海上部にまで到達し、
外に避難できた私たち。
脱出用の警備艇に乗り込んだあと
じっとパシフィック・ブイの様子を眺める。
『…(ピンガさん、)』
ピンガさんから預かった黒いスマホを見てみるも
未だに何の通知も無く。
携帯を見る度、ただただ不安が募るだけだった。
「どうしたの、A」
『直美…』
「…」
先程グレースの正体を知ったばかりの直美は
私に対して何と言ったら良いのか分からないような
そんな表情を浮かべていて。
『グレースの事だったら大丈夫
結果は最悪に終わってしまったけどね…
あの日々が偽りだったとしても
私は忘れない』
「…そうね」
『うん』
__直美と笑い合った、丁度その時だった。
[ドオォォォォォォォン…!!]
『ッ_!?』
「…!」
凄まじい爆発音と共に、
パシフィック・ブイの中心部が大きく吹き飛ぶ。
ついに魚雷がぶつかったのだ。
幸い、全員避難できていたから良かったものの
あの威力…
水中でも爆発が起きているため波が大きく揺らめいた。
「なんてこった…」
「あぁ…パシフィック・ブイが…」
局長や直美が呟く声を横で聞きながら
私は静かにブイを見つめる。
グレースと過ごしてきた場所
…結果はどうであれ、思い出の詰まった大事な場所
それらが崩れるのは一瞬なんだと知った。
_ブブッ
『…!』
そのタイミングで突然鳴った携帯の通知に
思わず肩をビクつかせながらも
私は勢いよく携帯をポケットから取り出した。
“生きてるか”
『…!』
ピンガさん…!
というかこの携帯、連絡先はピンガさんとベルモットさんしかいないからピンガさんで当たり前か。
とにかく、彼も無事みたいで良かった…。
“私なら大丈夫!
ピンガさんは海に出たあとどうしてるの?”
警備艇の端に移動し、こっそりと文字を打つ私。
“潜水艦に向かってる”
『…そっか…』
つまり
今魚雷を発射した潜水艦に戻ってるって事だよね
本当に悪い人なんだな…ピンガさん
私からしたら彼が悪い人でも何でもいいんだけど。
携帯を眺めながら、口元を緩ませた__その時。
『…え!?』
向こう側の海中が突然眩く光った。
恐らくそれは
ここに立っている私しか気付いていない。
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哀愁(プロフ) - 続き楽しみにしてます! (5月7日 22時) (レス) @page33 id: 4b362b9d0f (このIDを非表示/違反報告)
MEIKA(プロフ) - 一気に読み終わるくらい素敵な作品でドキドキが止まりませんでした!!更新待ってます! (4月22日 5時) (レス) @page33 id: 1bb6835bc2 (このIDを非表示/違反報告)
あ - めっちゃ好きです!更新待ってます! (2月24日 18時) (レス) @page33 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
ノア - 更新楽しみにしてます……!!この作品ばり好きすぎてほんとに一生リピってます( ߹ㅁ߹)頑張ってください! (1月14日 23時) (レス) @page33 id: 76976485fa (このIDを非表示/違反報告)
いぎ - 更新楽しみにしています!大好きな作品なので待ってます! (12月5日 22時) (レス) id: 0fab079a1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:缶コーヒー | 作成日時:2023年8月15日 17時