四季紡ぎ。 (ページ26)

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怒り【月ヶ瀬亨】ページ26

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突然、僕の目の前に幸運が舞い降りた。

僕の楽譜を預かってくれるという人が現れたということだ。
名前は確か＿＿

「時雨くんだっけ、ありがとう。御礼として今度ご飯とか奢るね。じゃ、僕はこれで」

そう言うと僕は手をひらひらと振り、踵を返す。行き先は “破壊者” の蔓延(はびこ)る戦地だ。

さて、四季紡ぎの本領発揮といきますか。

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見渡す限りの大地に、気持ち悪い生物…もとい破壊者がうようよといた。

もはや戦地は混沌と化していた。

とりあえず何よりも、まずは状況把握が大切。

さて戦況は＿＿

……お世辞にも良いとは言えないかな。いや、寧ろ悪いと言った方がいいだろう。あちらこちらに仲間が倒れている。

倒れている仲間の周りには、夥しい血だまりができていて、血を見慣れている僕ですらゾッとした。それに加えて悲しみとは別の感情がこみ上げてきた。

そして、僕のものとは思えないくらいナイフのように冷ややかな声が声帯から出た。

「…全員に伝達。負傷した者は後で医務室に。僕が責任をもって治療してあげるから」

────────

僕の中で、何かが切れる音がする。まるで、ピアノ線が切れたような音だ。

それと同時に、僕の中で精一杯抑えていた黒くて蠢く “僕じゃないもの” が心の淵から溢れてくる。

これは『怒り』だ。

────────

僕は君達(破壊者)を許さない。仲間を傷つけた罪は万死に値するよ。

「……さあさあ、どいたどいた。

“俺” の絶対零度の餌食になりたくなければ、だけどね？」

辺りには空気をも凍てつかせる冷気が漂っていた。

後で気づいたこと。どうしてこんなに僕の中の『怒り』が盛大になったのかというと、長い間抑えていたせいだった。

…自分改め、人って怖いなと思った瞬間だった。

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