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---ナルトsaid
おれは生まれた時からひとりだ。父ちゃんも母ちゃんもいない。
おれは何もしてないのに、皆からは"化け狐"と言われ、近付けば遠ざけられた。
石を投げられるなんてよくあることで、もう珍しいことでは無くなっていた。
その日もそうだった。
またあの鋭い痛みに耐えなくてはならないのかと、石が当たる前にぎゅっとおれは目を瞑った。
でも痛みは何時までも襲ってこず、代わりに重たい音と同時に温かいものに包まれた。おれは誰かに抱き締められていた。
「なんだよおまえ!」
「ばけぎつねたいじのじゃますんなよ!」
「そーだそーだ!」
……またこれだ。やっぱりおれはばけぎつねなんだろうか。不意に心に差し込んだ黒い影に、おれは飲まれそうになった。
「この子は化け狐じゃないってばね!」
初めてだった。
おれが狐じゃないと否定してくれたのは
---守ってくれたのは
おれはその茶髪の女の人の顔を見つめていた。深い紫色の目と目が合うまで、おれに石を投げた子達はいなくなっていた事に気付かなかった。
「ケガしてない!?」
おれはその目に戸惑った。
この人の目はみんなと違ったから。瞳の暗い色とは反対に、この人の奥は温かくて太陽みたいにぽかぽかしていた。
おれに怪我がないと分かったその人は、数秒後、はっと我に返ったような顔をした。
「もうこんな時間!」
"じゃあね"とおれの頭をくしゃりと撫でてその人は爪先の向きを変えて走り出した。
"まって"という言葉は出ず、おれはその背中を追いかけていた。
その人はアヤノという名前で、ラーメン一楽と暖簾に書かれた店で働いていた。その日からおれはその店の前をよく通るようになった。
おれに気づいて欲しくて。また頭を撫でて欲しくて。ぎゅっと抱き締めて欲しくて。
あの人は怖くない。でも他の人は怖い。
そんな思いがあって、その暖簾を潜れずにいた。
でもある雨の日、傘も差さずに里の中を目的もなく歩いていたら、あの人の顔が浮かんで、どうしても会いたくなって、おれは暖簾の中を覗き込んだ。
でもあの人は居なくて、目の細い男の人がいて、目が合うとおれは慌てて逃げようとした。怒鳴られると思ったのに男の人は逆に俺を招いた。
「アヤノちゃん!タオル何枚か持ってきてくれ!」
逃げようとした足が止まった。
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月25日 22時