32.君を見守る-01 ページ43
ーーークシナsaid
長い夢を見ていた。そんな気分だった。
私は暗闇の中にいて、隣にはずっとミナトがいた。
言葉を交わすこともなく、ただ二人で流れ星を待つかのようにしてその暗闇の中に座っていた。
時間の感覚など無くなっていたそんな時、私たちのずっと遠くに一点の光が現れた。その光は徐々に私たちに近付き、少しはなれた場所でピタリと止まった。
目を凝らして、大きくなった光の中を見てみれば、オレンジの光と水色の光が戯れるように時々交わっては弾けていた。
しかし私たちの存在に気付いたのか、その二つの光は動きを止め、みるみるうちに小さな子供の形へと変わっていった。
それからオレンジの子はぴょんぴょんと跳びはね、水色の子は光の中から身を乗り出し、私たちの方へ手を伸ばした。
こっちにおいでと、一緒に遊ぼうと、そんな事を言われている気がした。
その二つの光の正体が気になって。あの光の向こうには何があるのか気になって。気付けば私は立ち上がっていた。
でもこの光に触れれば何かが起こる気がして、私はそれに近付く事を躊躇った。
その時誰かが私の背中を押した。
ミナトだった。
よろめいて一歩前に足をついた瞬間、私はぐんぐんと吸い込まれるように光に近付いていった。
突然押し寄せた恐怖から、私は後ろを振り返った。
「行っておいで」
声ははっきりと聞こえた。でもすぐ後ろにいるはずのミナトは遠くにいて、加速度を増して私たちの距離は離れていった。私がその光に包まれる頃にはミナトの姿は見えなくなっていた。
「ミナト!!!!」
私がその暗闇の中で最後に見たミナトは、どこか悲しげに私に笑いかけていた。その理由を、私は目覚めた後に知る。
その後の、目覚めた後の事は殆ど覚えていない。
私は三代目様から色々なことを聞いた。あの日の全て、ミナトの事、私たちの置かれている状況、私たちが死んだことになっている理由も。
「住まいは手配した」
本来なら私はこの地下で身を隠していなければならないのだろうけれど、三代目様のご意向で私は普通に生活することを許された。
勿論幾つかの条件付で。
一、姿を変えること
一、決して正体を明かしてはいけないこと
「関わるなとは言わん。ただ…」
「分かっています」
一、ナルトに母と告げてはいけないこと。
.
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月25日 22時