トリップしたら自来也の娘に!?【part3】 (ページ27)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:2,092 hit

-13 ページ27

決して、ミナトの命とAちゃんの命やナルトの人生を天秤にかけたわけではない。
ミナトの目を見て、今度は私が気付かされた。

ミナトは絶対に自分の意見を、これからすることを変えないと。

言葉は要らなかった。

ミナトは、抱いているナルトを私に差し出した。私はそっとナルトを抱いた。

ナルトを包む布から、じんわりとナルトとミナトの体温が私に伝わってきた。

途端に私は泣きそうになった。

なぜなら、私はこの先この人の笑顔を見る事や、温もりに触れることすら出来ないのだから。

手を伸ばして、ミナトを引き止めたい。そんな衝動に駆られた。でもそうできないことが私の目頭を熱くさせた。

反射的に俯いた。零れそうになるものを必死に堪えて、固く目を瞑った。すると不意に、私の頭に軽い重みが乗り、私は慌ててミナトの顔を見た。
その重みの正体は見なくても分かっていた。

ミナトの手だ。

ぽんぽんと二度手を弾ませると、その手は私の頬に滑り落ちた。

ミナトの手は温かかった。

それからミナトは綺麗な青い目を細め、唇に緩い弧を描いた。そして私が今まで見た中で一番穏やかで優しい表情で言った。

「クシナ

　愛してるよ」

たぶんこれは一瞬の出来事だったんだと思う。でも私には永遠に続くかのように長く感じた。
私が言葉を返す前にミナトは私に背を向けていた。

そしてAちゃんに微笑み、振り返ってもう一度私に微笑みかけた。

ミナトが九尾に向き合った時、四代目火影の背中とナルトの父親としての背中が交互に見え、ずっと見てきたその背中は私にはいつもよりも何倍も大きく見えていた。

私はその背中を見つめながらただ頼もしさと、苦しさ、ミナトに触れられた頬から逃げていく温もりだけを感じていた。

堪えきれなくなった感情が、一筋の涙となって私の頬を滑り落ちていった。