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目を見て数秒で分かったのだと思う。
私が「分かった」と言わないと。
するとミナトはこの場にそぐわない困ったように眉間にしわを寄せながら顔に笑みを浮かべ、それから今度は落ち着いた穏やかな声で言った。
ミナトの顔を見て、私の顔はひどく歪んだ。
ミナトが何を考えているのか全く分からなくて。こんな状況でそんなに優しい顔をして微笑む理由が分からなくて。
「クシナ
あそこにいるAちゃんを助けることが出来るのも
オレだけだと思うんだ」
ミナトが歯を見せて笑った。
自然に目線がAちゃんへと向かった。
Aちゃん…。
ある日突然自来也先生が私たちの家を訪れて、「ワシが任務に行っている間だけ娘の面倒を見てほしい」と頼みに来た日は本当に驚いた。どこから突っ込めばいいのか分からなかった。
詳しく話を聞き、私はそれを承諾した。血は繋がっていないと言っていたけれど、ずっと自来也先生と一緒にいたら少しは性格とか似てるのかなとか、Aちゃんに会う前、いろんな想像をした。
会ってすぐ思ったのは礼儀正しい子。年齢と行動や言葉遣いが合っていないと思ったりすることが多かったけど、時間が経つにつれ色んなAちゃんが見れた。
ちょっと不器用なAちゃん。時々無邪気に笑うAちゃん。意外と無鉄砲なAちゃん。
色んなAちゃんがいた。
それからよく手をつなぎながら道を歩いた。初めはただ繋いでるだけだったけれど、だんだん愛情のようなものが芽生えてきて、いつの間にか自分の娘の様に思うようになったんだっけ。
戦争中、勝手に里を抜け出して、中々帰ってこない先生を追って一人でAちゃんが雨隠れに行ってしまった時は心臓が止まりそうになった。アキラちゃんが無事だと連絡が来るまで夜もまともに寝れなかったし、食事もろくに取れなかった。
木の葉に帰ってきたときは、「おかえり」という前に叱った。そういえば思い切りげんこつを食らわせてしまった気がする。
それから一緒にご飯を食べたり、お風呂に入ったり、修行をしたり、数えるほどしかないけれど、私とミナトとAちゃんの三人で遊んだこともあった。
Aちゃんとの思い出が次から次へと溢れてきた。
私はもう一度ミナトの顔を見た。
ミナトの表情は変わらず、優しい顔をしていた。
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月25日 22時