-08 ページ22
「んの!!はな、っせ!!ガイっ!!!
Aがあそこにいるんだ!!!」
母さんの目がオレの背後に移った。オレの目も、それを追うようにして動いた。
岩と瓦礫に敷かれたAちゃんを助けようとする銀髪の彼を、友人であろう黒髪の人物は必死に彼を止めていた。
彼の声が、嫌というほどオレの胸に刺さる。
そうだ、オレもAちゃんを助けないと…。ふらりと立ち上がり、オレはその場所を目指そうとした。でも、駄目だった。
「イタチっ!!!」
突然強い風が吹き、どこからか伝ってきた炎が火力を増してオレの行く手を阻んだ。
母さんに抱き寄せられたが、ちりっと炎の熱が鼻の頭を掠めた。
そしてまた風が吹き、あっという間に俺たちの周りには赤く立ち上がるもので一杯になった。
母さんがオレを更に強く抱いた。
「早く逃げなさい!!!」
今まで聞いたことのない母さんの声だった。力強さの中に、押し殺したなにかの感情が混ざっていた。
彼には母さんの声が届いていなかった。
でも、彼の友人には届いていた。
「カカシ!!!しっかりしろっ!!!」
彼は反応を変えなかった。
彼の友人と母の声が同時に聞こえた。
---カカシ、すまん
---イタチ、ごめんね
母さんが何に対してオレに謝っているのか分からなかった。
十数メートル先にいる彼の友人は、彼の首に手刀を落とした。
母さんと、彼の友人の目が合った。そして次には、母さんはオレを抱いて走っていた。
…何やってるの母さん。Aちゃんは?Aちゃんはまだ…
「母さん待って!!Aちゃんはがまだ…!!」
「ねぇ!!ねえったら!!」
「母さん!!!!」
母さんはオレの問いには何一つ答えなかった。ただ、母さんの顔を見上げ、歯を食いしばった母さんの目からあふれ出たものがオレの頬に落ちた時、やっと全ての状況を受け入れなければいけないと気付いた。
---オレが早くAちゃんを止めていれば
---オレのせいでAちゃんが・・・・
そんな思いがふと頭をよぎり、オレの胸を深く深く抉った。苦しくて、反射的に胸あたりの着物をきつく握りしめていた。
自然に溢れ出す熱いものは押さえることができなかった。
目を瞑っても開いても脳裏うかぶのはAちゃんの笑った顔だけだった。
・
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月25日 22時