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しかし決して目立っているわけではない。白のような青のような、でも冷たくはない不思議な光。あたり一面に咲く花々はまるで天の川のようだった。
とても綺麗だ。
残念なほど語彙力がない自分が恨めしい。しかし例えどんなに言葉を知っていたとしても、私は同じ言葉で表現すると思う。この幻想的な風景にあてはまる言葉はこれしかないのではないだろうか。
なぜカカシお兄ちゃんは私にこれを見せてくれたのだろうか。疑問に思ったけれど私は聞かなかった。その理由も、聞いても教えてくれないと思ったから。
嬉しそうに顔をほころばせるAを見て、カカシの表情は口布で隠れていて見えないが、雰囲気はとても穏やかなものだった。Aが喜んでいるその姿が、彼の心の奥をくすぐった。
カカシがAをここへ連れてきたのは理由がある。
Aはよく空に向かって手を伸ばしている。それも毎回決まって中がよさそうに並ぶ二つの星に向かって。そして、手を伸ばしては掴もうとピクリと指を動かすが、決して握ることはせず、苦しそうにその手を下した。
その行動に何の意味があるのか最初はただただ疑問に思っていたが、Aは星が掴みたいのではないかとある時から思い始めた。どんなに頑張っても星を掴ませてあげることは出来ない。だからカカシはせめて、という思いで、偶然見つけたこの場所へAを連れてきたのだ。
そんなことも知らず、Aはしゃがみ込み、名も知らぬ花の花弁を撫でた。
月夜に輝くその花に、初めは感動するばかりだった。でもその数日後、苦い思いが私の胸の中に広がった。
あの花は夜にしか咲かない。そう。夜にだけ。
カカシお兄ちゃんはあの花を見つけた。あの花をだ。
もし、私がカカシお兄ちゃんに出会っていなかったら、この花の存在を知ることは無かった。
私はあの花を見つけることは出来なかった。
やはりカカシお兄ちゃんは暗部なのだと。闇にいるのだと気付いてしまったからだ。
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月25日 22時