女王蜂

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「真奈が…」



携帯を耳から離した彼は、申し訳なさそうに私をみた。



 
『真奈が？どうしたの？』
 
「…ごめん、真奈のところ行ってくる」
 
『…そうですか。』
 
 
 
 
無感情に言ったはずのその言葉は、悲しみを隠しきることができなかった。
仕方ないと思う気持ちと、黒い気持ちの半分半分。




 
さっき、‘今日は傍にいる‘ってそう言ってくれたのに。







そんな約束だって、真奈の一言で消えてしまう。
どうしたって彼の中で、私の優先順位は真奈より下なのだ。



そんなの、わかりきったことなのに。
 
 



 
「約束守ってやれなくて、ごめんね。」
 
 
 
 
 
子供をあやすように、彼は私を撫でる。
優しく笑みを浮かべていたけれど、それはどこか苦しそう。







なんで、彼は真奈を想ってこんなに辛くならなくてはいけないのだろう。






苦しいのに、彼女の所に行くんだろう。






真奈はなんで、結婚してるくせに大貴くんに頼るの？




彼の為の感情なのか、ただの嫉妬なのか自分でもわからない。
ただもやもやとした黒い感情が私を支配していく。






頭に乗った手が離れていくのと同時に、瞳に熱が集まるのを感じた。
 
 
 
.
 


『行かないでください』




気づいたら体が動いていた。
 




 
 
 

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