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ドサリとつい数時間前にも聞いた音を、今度はドア越しで聞いた。そのまま音沙汰がないのを確認してから、洒落た形のドアノブを引く。
先程と同じように倒れた彼女を先程と同じように＿＿＿所謂姫抱きというものをすると、背後からにやにや笑いが降ってきた。
「相変わらずお姫様だっこが様になりますねぇ、ウサギさん？」
「黙っちょれチシャ猫」
そう否定すると、金髪は特徴的なニヤニヤ笑いで俺を見る。
「これはまた......小瓶もクッキーも食べてまうとは。随分やんちゃなアリスが来たようで」
俺と初めて会ったときの彼女の顔は青白いというか土色というか、不健康ど真ん中みたいだったのに、今は微かに頬に赤みが差している。
よく眠ったことで体調が戻ったのと＿＿＿小瓶、クッキーのおかげもあるのだろう。
「で、このアリスの名は。何というんですか？」
少し、言い澱んだ。
まだ、＿＿＿自己紹介もされていなかったから。
「＿＿＿＿＿＿A」
「A、か。自ら穴に落ちてきた、夢の中にいることを選んだアリス」
「っ...それは違うだろ、こいつはただ俺の目の前で倒れただけだ」
「だけどウサギさん......志麻君の前で倒れた。小瓶の液体とクッキーを食した。それだけでもう十分に条件は満たしちょります。.........何より志麻君も、彼女がほしいのでは？」
最後の疑問形に、思わず顔をしかめる。
言いたいことだけ言ったチシャ猫は溶けるようにいなくなり、アリス＿＿＿Aはくたびれたスーツを未だに身に纏いながら俺の腕の中にいた。
甘味にやられてくらくらと溶けたAは固く瞼を閉じて、しかし花が開いて蜜が零れるような色濃さがある。
ぞく、と微かに血が疼いて、髪の毛にキスをしかけて.....薄絹のような自制心が、ギリギリで歯止めをかけた。
今止まらなくなっては、不味い。
「...ああ、」
狂おしく狂おしく狂おしく愛しい。
喉をかきむしるような歯痒い衝動に駈られる。ちりちりとしたもどかしさが痛いほどに身を焦がす。どうしようもないもどかしさはそのままAを見つめ続ける自らの視線へと変わっていった。
彼女を、アリスを、Aを。
今すぐこの愚かなウサギのものにしてしまいたくなる。
今日この後は、彼女は一旦現実に戻る。
...しかし、必ず。
彼女はまた必ず足を止めるのだ。
夢と砂糖でできた甘ったるいここのカフェに、夢のように甘く悪夢のように苦いここに。
俺の、隣に。
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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (
レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
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