アイドルがアイドルに恋した話 S.S

005 ページ5

・





「あの、AAさん、ですよね？」
『はひっ、』





え、今、今、今、勝利くんに呼ばれた？
認知されたの……？





「すごく、楽しかった、です……」
『あ、良かったです』






その言葉が嘘だとしても、私今すぐ死ねるかもしれない。
今日という日があったと言うだけで
悔いのない人生だったと言えてしまう。




勝利くーーーーーーーーーーんっっっ
なんて心の中で叫びまくる。





『？それは…』
「えっ」




ふと視線を落とすと彼の手に持っている紙袋。
一瞬だけどたぶん今回のツアーのグッズが入っているように見えた。

それに彼が気づいたらしい。




「グッズ、です」
『あ、ですよね』





どれを買ってくださったんですか？
誰推しですか？なんて自爆する質問は絶対に出来ない。





「か、買っちゃいました、(笑)」
『?!??!!?!』





なに、買っちゃいましたって……
可愛すぎやしないか？え？
そんな私の無料であげるよ(涙)





「遅くにすいませんでした、」
『佐藤勝利さんも、活動応援してますっ』
「！ありがとうございます」


「Aさんも頑張ってください」
『はいっっ』




応援してます、と笑顔を向けられる。
その一言だけで死ぬまでアイドル頑張れそう。
今の録音しておけばよかった()




でも自分も応援してると本心を彼に直接伝えることが出来た。
彼が1度お辞儀をして、立ち去ろうとする。
そしたら足が縺れたらしく持っていたものを落とした。




「『？！』」






紙袋から出てきたのは私……





の、顔が印刷された小さな団扇。


他にも私のプロデュースしたグッズが何個か出てきた。咲良のはない。私ばかり。



いやいやいや……(笑)

いくら勝利くんが大好きだからってこれは脳内変換のし過ぎでしょ、私。さっさと現実に戻さないと…





「……ごめんなさい」






弱々しい声にはっと我に返る。
グッズを落として私に見られてしまった目の前の人は
耳まで顔を真っ赤にして、今にも泣きそうなうるうるした瞳。





『…………え』





どうやら

私、推しに 推されていたようです。









・

006→←004

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す