は _ IV ページ4
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「ホント?…良かったぁ」
Aは黒服からの報告で胸をなで下ろした。
__Aさんが庇った部下は軽傷です。三日後には復活するかと。
だが、太宰は違った。
もし、此の場にAがいなかったら、
もし、Aが死んでいたら、
太宰は庇った部下を殺して、自分も後を追おうとしていた。
「治〜?おーい、治?」
Aはボーっとしている太宰の目の前で手を振る。
「治さん?え、生きてるよね?治くーん、死んでますか?」
Aが太宰の肩に触れようとした瞬間、太宰は立ち上がった。
「触るな!!」
太宰はAの驚いた表情を見て我に返った。
「え、あ、ちが」
「っ…御免ね、治」
Aは無理に笑い、出しかけた手を引っ込めた。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
苦い微笑みをしてAは医療室を出て行った。
太宰は何もできなかった。
遣り方、が判らなかった。
Aに触らなければAは生きていける。
そうだ、それで善いのだ。
好きな人に振られた人が自分に云い聞かせる言葉がある。
『好きな人の幸せを願うのが一番良い道』
只、振られたから恥じない為に云う言葉。
だけど、今の太宰には此の言葉以外見つからなかった。
もう、此の手しかなかった。
Aを辛くしたくない。
Aには生きていてほしい。
Aが出て行った医療室で太宰は声を殺し一人涙を溢した。
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結愛 - ……おさむんの夢主を思う気持ち伝わって泣けた。うん (2023年2月28日 22時) (レス) @page3 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - なんか泣けました。サイコー( ;∀;) (2020年4月18日 0時) (レス) id: b9064fdf81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年4月13日 10時