君の名前を呼べない【赤司征十郎】

29 AM 9:13 ページ12

「――であるから、ここの式は…」

数学の時間。
おじいちゃん先生が熱心に教えてくれてるけれど、ここは京都の進学校。
みんな、予習終わってるんだよね。

隣の眼鏡くんも今先生が教えている
数学1じゃなくて、数学Bを解いていた。

それに、このクラスは特進クラスだ。
だから、他のクラスと比べて
殆どの生徒が数学の自習をしてる。

だけど――

「先生。」

赤司くんは違う。

「おー、どうした赤司？」

「そこの式、違いませんか？cosθじゃなくてsinθです。」

「…あー、すまんな。ありがとう。」

「いえ。」

赤司くんはちゃんと話を聞いて
ノートをとっている。

赤司くんが先生の間違いを指摘した後、
勿論少しだけ教室は女子の声でザワザワした。


「赤司くんってやっぱりカッコいいよね〜」

「流石名家の息子さん。」

「やっぱり育ちが良いと何やっても様になるんだろうね〜。」


頬を赤く染めてひそひそ話をする
クラスメート。

確かに、赤司くんの家は名家だ。
幼い頃に沢山の英才教育を受けたってことも
聞いたことがある。


だけど、私は名家で育ったから
赤司くんがカッコいい、凄いとは思わない。


赤司くんは
人一倍、ううん、人百倍努力してる。
自分自身と戦ってる。
他人の事を考えてくれている。


だから、カッコいいんだよ。
だから、凄いんだよ。


だから――


私は赤司くんの事が好きなんだ。

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