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徐に靴を脱ぎ置き、部屋の奥へ足を進めながらタイを外しシャツの襟元を緩めて、帽子と外套を壁に掛けると寝台へ背を預けた



明かりを付けただけの部屋に時計が音を刻む

見れば午前一時が目前、食事やら風呂やらを済ませた頃には短針がもう一周しているだろう

いつも通り二時に就寝、とはいかなさそうだった




「___珈琲は明日飲むか」



原因が彼奴であるからして、別にそんなのは何てことないがそれよりも


思い出される彼奴の声、言葉、笑顔

その記憶が俺を癒すだけではないのは、彼奴がまるで俺のことを意識してないからだ


マンションの隣の部屋の男なんざ彼奴は眼中にない

彼奴にとって俺は『お隣さん』、それ以上でも以下でもない

判ってはいるけれど



「……好きなもんは好きなんだよ、くそ」



きっとこれからも俺は、マンションを歩く度に彼奴の姿を探すだろうし

彼奴と鉢合わせる偶然があったなら、精一杯恰好付けて振る舞うだろう



そんなに好きなら、つべこべ云ってねえで、もっと深い関係に踏み込めば良い?




それが、そうもいかねえ




____俺には彼奴に、秘密にしてることがあった



彼奴が気付かねえ限りこの慕情もその一つだが、俺の一番の秘密、彼奴にゃ絶対知られたくないこと

それは____




「やべえ……ねみい……」


晩飯は諦めよう

風呂だけ済ませて、さっさと眠りに着くべく、だるい体を起こした







そして朝、午前八時過ぎ

大事に取っておいた缶珈琲を出勤の行きしなに味わおうと手に取りがてら、外套を羽織り支度する

いつもと同じ時刻、身なりで、いつもと同じだろう仕事に向かうため


_____開けた、扉の先のことだった





「粗茶ですけど、良かったら」

「うおお、あざっす!」

「温かいうちにどうぞ」


夢にまで見る彼女が、楽しげに談笑しているのは絆創膏がトレードマークである部下

隣の部屋の前、予想外の光景

残念ながら俺は寝惚け眼でも何でもなく、目を擦っても五度見しても二人は其処に居て



「あ、中原さん」

「あっ、どうも! おはようござ、……中也さん?」



おい待て、何がどうなってやがる

何で立原が此奴と__しかも立原が有り難そうに飲んでるのは湯気の立つ茶__もしかしなくても、此奴が淹れたのか?

思わず手の中の缶を潰す勢いで握り締めた



「立原手前、巫山戯んな」

「え」

「一生許さねえ」

「え」



俺だってまだ飲んだことねえんだぞ



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(プロフ) - 完結おめでとうございます!鼻血が出過ぎてぶっ倒れる所でした(笑) 推し尊い…… (2019年4月3日 0時) (レス) id: 381002261f (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 完結おめでとうございます!キュンキュンが止まりませんでした。ありがとうございます! (2019年4月2日 16時) (レス) id: 4d7fcc5e30 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いいお話でした。 (2019年4月2日 15時) (レス) id: 1bfa3e637e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 更新されてる?( ☆∀☆) (2019年2月9日 10時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - あぁ、、、推し(中也)が尊い、、、 (2019年2月9日 9時) (レス) id: c6be9b3184 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年3月21日 23時

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