【文スト】包帯アレルギー

１２ ページ12

·



寝台の上、太宰さんとくっついたまま

二人きりで静かな筈の医務室で、私の耳には絶えずうるさい心臓の音が鳴り響いていた

もちろん、私の心臓だ



「何でわざわざ、医務室(ここ)まで……」



今日は朝イチからこの部屋に閉じ込もって、太宰さんから身を隠してひっそりとしていたのに

与謝野先生に一日、匿ってもらっているつもりだったのに



「だって、早く包帯に慣れてもらいたいから」



それはつまり太宰さんの予言通りにいけば、私が太宰さんに告白をするのが早まるってことでもある

私に告白をさせる＿＿って、果たして、この人は真面目に云ってるのだろうか



「だからって、抱き締めなくても……」

「ああ、包帯が近くて困るかい？」



どこか面白がるような太宰さんの声に、何にも云えなくて困り果てた

改めて思うけど、この嘘は本当に、無理がある

後数日ももたない気しかしない、何しろ相手は、何枚も上手な太宰さんだもの



「でも今までだってたくさんこうしてきたのだし、別に大丈夫だよね」



ほらまた、ぐうの音も出ない正論だ

今までどうして私は、彼の腕を拒んでこなかったのだろう、なんてのは答えの見え透いた愚問

妥協でも諦めでも、親切心な訳でもなく、私の中に拒まない理由しかなかったからだった



「そう、ですけど……」

「まあ私はしたいようにするから、本当に嫌だったら云いなよ」

「……別に、嫌、な訳じゃ」




＿＿＿＿ " 包帯アレルギー "

その最大の、痛恨の弱点は、私が太宰さんに惚れてしまっているということ

まさに、惚れた弱みというもので



「私だって、その……包帯に、慣れなきゃいけないですし……」



だから、つい口を滑らせて、こんなことを云ってしまうのかもしれない

自分から太宰さんを遠ざけておいて、包帯アレルギーを撤回する余地はあるのだと、わざわざ主張してしまうのかもしれない



「ふふ、じゃあAちゃんに一つ提案」



あざといくらいに優しくて甘い声

名前を呼ばれただけで胸の奥がぎゅうっとなる



「包帯じゃなくて " 私 " を意識すれば、こうして触れ合っていても大丈夫だと思うのだよね」



太宰さん、それは本気で提案してくれてるんですか

" 太宰さん " を意識なんてそんな、その方が心臓に悪いとも知らないで

ああ、それとも


それとも、判って云ってるんですか＿＿＿＿？



·

１３→←１１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す