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「行きたいなあ、わたしも」
「なにが?どこ?」
「ドーム。みにいきたい」
「あ、ドーム?…ね。ほのちゃんもうちょいしっかりしたら」
「ほのちゃんに卓ユニ着せるの夢です」
「いややばいわそれは。球みてる場合じゃないやろそんなん、俺が」
エラーしまくるわ。と 笑う、卓。
温めた軽めの食事をダイニングテーブルに並べ、わたしも彼の前に座る。
この、ふう、と一息つく時の表情が、たまらなくすきだなあ なんて。
「…あ、そういえば明後日さ、デーなんやけど」
「うん。連戦たいへん」
「いや、それはまぁあれなんやけど、来るかもしれん。何人か試合のあと」
「え、チームの人?うちに?」
「そう、いつもの奴ら…ごめん勝手に決めたけどまずくない?」
「やっとお披露目だ!うれしい」
こう、毎日家に籠りっきりで、どこにもいかない 誰にも会わないとなると、
なんと言うか…いろんなことがどうでもよくなってくる。
部屋着のままで、あげくボタンも閉めずに丸出しで寝ちゃうし、化粧もしなければ髪だってボサボサ。
いや、でもそんなところまで完璧にしてる余裕なんてまだないし、まだまだリズムの定まらない新生児と関わることでいっぱいいっぱいだし…
いや、でも…これじゃあダメだ!
彼のチームメイトを家に招くということは、この空間への良いスパイスになりそうだ。
まだ、実際ほのかもみんなに会ってないし(どうやら写真は卓が見せびらかしたらしいけど)。
何より、会いたい、と思ってくれていることが嬉しい。
「全然ほんと、いつも通りでいいから。化粧とかせんでも」
「いや…気合い入る…」
「ふはっ、気合い…なんの気合いよ…入れんでいいわそんなん」
「会うの久しぶりだし、ていうか家くるの初めてじゃん!誰かが来ることなかなかない」
「断ってきたもん今まで。いやでしょなんか入ってこられたら…今はほのかいるけん別としても」
…うん、卓は、ほのかが産まれてから、やっぱり変わった。
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作者名:まいち | 作成日時:2017年9月15日 3時