第178話ですよー ページ28
*
屯所に帰って、怪我の手当をしている間も土方さんは無言だった。
その瞳孔開きまくりの目には、正面にいる私なんか映っていない。おかしい。何がって...不逞浪士に土下座は以ての外、小言を言わないのも、マヨ持ってこいって言わないのも、全部。
まるで土方十四郎という人物が抜け殻になっているみたいに。
あ「...土方さん、今日の事近藤さんには伝わると思いますけど...ちょっとくらい安静にしていてくださいね」
救急箱を片付けて虚ろな目を覗き込む。やっぱり貴方に私は見えていない。
襖を閉める隙間から見えた背中は、とても頼りなかった。
「神田君」
...一瞬心臓止まったわコレ絶対。
見回りを途中で切り上げちゃったから引き継ぎするため隊士を捕まえようとしたのに...
あ「...早かったですね、伊東さん」
もっとゆっくり帰ってきてよかったのに。ナメクジくらいでよかったのに。カタツムリくらいでよかったのに。
伊東「ちょっと付き合ってくれないか?」
そう言って伊東さんが私に見せたのは、竹刀だった。
...え、今?
あ「は、はあ...」
とぼとぼ着いて行った先は勿論道場。まだ太陽は高い。パトロールやら取り締まりやら調査やら仕事時間だし、非番の奴は休み満喫してるし、誰も使用していなかった。
竹刀片手に悠然と立っている伊東さんを尻目に、腰の刀を外して私も竹刀を手に取る。
伊東「始めようか」
あ「...お手柔らかに」
竹刀が交わる。
気持ちの良い音とは裏腹に、伊東さんの意図を汲み取ろうとする。
この人は、一体何をしようとしている?良くないことが起こる、そう虫の知らせがした。
伊東「考え事かい?」
鍔迫り合い、必然的に顔も近くなる訳で。目の前の男は僅かに口角を上げている。
あ「...まあ、それなりに」
自分でも意味わかんない答え方したな、とは思う。でも下手に誤魔化すよりはずっとマシだろう。
伊東「ああ、近藤さんには先程の事を伝えといたよ」
___自分でも、身体が固まったのがわかった。
...伊東さんの口から言われたのか。なんて、言ったのだろうか。近藤さんの性格だから、脚色されていても信じてしまうはずだ。
とはいえ直ぐに罰は下されない。土方さんは不本意だけど副長であり、近藤さんと並んで私達を率いる重要な人だ。不本意だけど。
伊東「僕もアレは驚いたよ。まさかあの土方君が...目を疑ったよ」
あ「...私も、最初は土方さんだと思いませんでした」
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練紅龍(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんにちは。幼馴染たちと新参者たち(敵)どいつもこいつも腐れ縁やら因縁やらでつながれてます。ちゃんとそこまで書けるよう頑張ります……! (6月7日 17時) (レス) @page17 id: 0cf84c7016 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんばんは。んー、武州組は兄弟って感じだからオチは高杉さんかカムイなのかな?なんて、また次を楽しみに今日は終わります。 (6月7日 2時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
練紅龍(プロフ) - 焦凍さん» ありがとうございます!励みになります...遅筆ですが頑張ります! (2021年10月11日 8時) (レス) id: 817163acd5 (このIDを非表示/違反報告)
焦凍 - めちゃくちゃ面白かったです!続きも楽しみにしています!! (2021年8月21日 2時) (レス) id: 427116d3c5 (このIDを非表示/違反報告)
練紅龍(プロフ) - みくるさん» やーありがとうございますー!コメントが燃料補給です...w今から書きますd (2019年2月7日 20時) (レス) id: 308444a36a (このIDを非表示/違反報告)
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