・ 横抱き(2) ページ4
「………!」
身体がまるごと宙に浮いていた。
近くにはさっきまで座っていた椅子も私のようにふわりと浮いている。
痛みも何も感じることなく、
ただただ雲のように浮かされているような感じだ。
客人は私を下から眺めていた。
ザワザワと客人が騒がしくなり、
虫が騒ぐように辺りは一気に声で溢れる。
「…なんだ?」
「あの子…浮いてる…?」
「おいおい、あの子銃を向けてんぞ…」
「裏切り……??」
私は今、弾丸に当たることなく宙に浮かされてるという状況下に侵されている。
これは、もしかしてあの人の……
その時私の隣にあった椅子が荒く
リイナの方へと向かう。
リイナは顔を動かしそれを簡単そうに避ける。
彼女の方に向かっていた椅子は壁に辺り
無様に悲鳴を上げ粉々に散った。
しかしリイナは椅子の足が掠ったらしく
右頬から少量の赤い血を出した。
「……チッ」
不機嫌に舌打ちをするもここにはそれ以上の怒りを感じている方がいるようで…
「おい………」
私を浮かせ、椅子の息の根を止めた張本人が
殺気立つオーラを放ってリイナに1歩近寄る。
中也はパチンと指を鳴らし、
私は一気に下へと急降下。
「えっ…ちょ、ええええ…!」
無防備な悲鳴をあげながら落ちていく
私の身体が辿り着いた居所は……
「……っと」
───中也の腕の中だった。
「…………っ!?」
さっきまでの恐怖を消すようにして
私の顔はみるみる蒸気していく。
こんなことされたのは生まれて初めてだからだ。
そして痛さも何も感じることは無くただ、中也の匂いがふわりと私の鼻に伝わった。
それでもなお心臓の鼓動が加速していく。
「…ちゅ…中也……」
私の絞るようにして出した小さな声は中也に届く事はなく、
「…俺の大事な部下に何やってくれてんだ」
彼は私を横抱きしたまま
一向に引く気のないようすで言い張る。
彼は恥じらいなど無いらしく
私を横抱きしたままだ……
「そんなのじゃない」
リイナは視線を斜め下に向けて呟く。
「…手前がやったことはマフィアの『裏切り』で間違いないな?」
そんな低い声をもらした中也は
周りの沢山の物を浮かせる。
ダーツ、バーのグラス
そしてカウンターの椅子までも………
この世には少なからず『異能力』を持つものがいる。
そして中也も私もその一人だ。
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時