百八十。似た者同士【麻】 ページ30
『ホント、あいつは…罪な男だな』
所々涙に詰まりながら
なんとか一通り話し終えたところで、大野さんがそう呟いた。
『なんでみんな、そんなに櫻井がいいのかね』
本当に…
潔く忘れられたなら、どんなに楽なんだろう＿＿＿
『言うなれば俺も…同じようなもんか』
え？
『まあ、最近はいよいよ諦めがつきつつあるけど』
溜息を吐くようにフッと笑ってそう漏らした、大野さんの思いに耳を傾ける。
そうすると…その、Aさんのお店で居合わせた客が言っていた言葉を思い出した。
“なぁAちゃん、本当に智のことはいいのか？”
『昔からまるで俺のこと、男として見てねーしな』
何かを思うような遠い目
その真意を窺うように見つめる私の視線に気が付いた大野さんは、『原さんも話してくれたから、俺も話すわ』と言って
今度は、大野さんとAさんのこれまでを知ることとなった。
.
『…分かった？』
『俺たち。めっちゃ似た者同士』
そう言って苦笑いする彼に、もれなくこちらも苦笑いとなる。
翔を忘れられない私と、Aさんを忘れられない大野さん
そして…大野さんの話を聞いて、一つ、猛省した。
「私、彼女にひどい言い方しちゃった…」
“翔が、こんな水商売の女と付き合ってるなんて。ガッカリよ”
『ひどい言い方って？』
だって…
男性客しかいない、そしてどの客もAちゃん、Aちゃんって…。それに
“俺たちはてっきりAちゃんは智と結婚するもんだとばっかり思ってたのに〜”
『水商売、ね…。まぁ、ある意味紙一重かな』
彼女にそう言ったこと。
大野さんは、怒るかもしれない
そう思ったけど…彼は、私を咎めることはなかった。
.
『あん時、Aのメシは食ったの？』
「いえ…飲み物を、一杯だけ」
私がそう答えると
やけに腑に落ちた顔して、そんなの何とでもないと言うように、こう言ってのけた。
『あいつの料理。一回でも食ったら、水商売なんて言えなくなるよ』
揺らぎないその言葉に打ちのめされる。
『しゃーねーな。次はAんとこにメシ食いに行くか』
そんな言葉に思わず顔を強張らせると、『あ、そういや店閉めてるんだった』と言った。
「閉めてる、って？」
『なんか、しばらく休業してもう一回勉強したいって』
それって…もしかして
みるみる込み上げる罪悪感と共に大野さんを見つめると、すぐに彼もハッとして、私と顔を見合わせた。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
