百六十二。背けられない ページ12
溢れる想いをぶつけるように抱き合って、同時に果てた私たちは、そのまま眠りに落ちた。
まだ日が登り切る前の明け方
やさしく射し込む淡い光を感じて不意に目が覚め、ゆっくりと目を開くと
私をギュッと抱きしめてグッスリと眠る、無防備な寝顔が視界に入る
翔さんの腕の中から、起こしてしまわないように注意してそっと右手抜き出したら
彼の閉じた目元にかかっている前髪を払い除け、そのまましばらく寝顔を眺める
余裕のない表情で私の名を呼ぶ声
強く抱きしめる逞しい腕
全身を這う唇から感じる熱
その全てが
私の不安を汲み取って、拭い去ろうとするかのようだった。
そして
触れ合う素肌から苦しいほどに伝わって来る、翔さんの想い
ちゃんと、感じ取れる。
だからこそ目を背けられない、麻里奈さんのこと
知ってしまって、私も会ってしまった以上
そして…彼女が、翔さんを今も想っているならば、尚のこと
ここできちんと向き合わないと、きっと私たちは前に進めない
『…ん……A…』
眠りに落ちたまま寝言で私の名を呼んだ翔さん見つめて
何故だか、涙が込み上げる
あなたは…どんな選択をするだろう
だけどこれは、私が強くなるために必要なこと
信念を持って料理を続けるために必要なこと
大丈夫
何があっても、私は立ち続けられる。
たとえ、彼を失うことになったとしても。
.
.
『は〜。朝の和食って体に沁みるよな』
そんなこんなで昨晩…結局手付かずとなったお夜食の鯛茶漬け
おかずを何品か加えて、朝食で改めた。
やっぱり昨晩、十分に夕食を摂れていなかった翔さんは何度も『すげーウマい！』と言いながら、たくさん食べてくれた。
『あんまり遅くなったから、途中で切り上げちゃって…ちょっと片付けてくる』
朝食を摂り終えた翔さんは、やり残した仕事があると言って身支度を始めた。
クローゼットから取り出したスーツのジャケットを羽織る一連の仕草を眺めながら、昨晩、彼から香った香水の香りを思い出す
あんなに強く香りが移るには…何かあったはず
だけど、今朝目覚めてから今の今まで
一瞬でも突き放した私を咎めることも、はたまた弁解するでもない。
『せっかく来てくれたのにごめん…行ってくる』
伝えるなら、今晩だ。
見送る玄関先で申し訳なさげにそう言って、扉に手を掛けた彼を呼び止める
「翔さん…今晩、たまには外に飲みに出ない？」
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
