百六十三。一番キレイな私を ページ13
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『いらっしゃいませ。お待ち合わせでしょうか？』
スマートに出迎えてくれたフロントマンに、“櫻井”で、先に入っているかと…と伝えると
瞬時に爽やかな笑顔を浮かべて『お見えですよ。こちらへどうぞ』と、無駄のない身のこなしで店内へ案内される。
涼子の結婚式の時以来に訪れる、六本木の老舗ホテルの最上階のバー。
“Aさんのこと、もっと知りたい”
“今日は、俺、お客さんじゃないよ”
私たちが心を通わせた、最初の場所
フロントマンに付いて店内に歩みを進めるうち、煌びやかな東京の夜景を目の前に陣取るカウンターバーの一角、すぐに愛しい背中を見つけた。
私のヒールの足音に反応したのか、ゆっくりと振り向いた彼と不意に目が合うと
一瞬驚いたような顔を見せて、けれどすぐにいつもの笑顔になった。
『Aは、ソルティドッグ…でしょ？』
隣に腰掛けた私にそう尋ねた翔さんは、既にウイスキーのロックを口にしていた。
「うん…翔さんは、やっぱりバーボンだね」
私がそう答えるとニッコリ笑った彼は、目の前のバーテンに『彼女にソルティドッグを』と言って、手に持ったグラスに再び口を付けた。
ここで、私たちが初めて乾杯したあの日と同じもの。
『さっき…振り返ってAを見た瞬間、ちょっと面食らった。すげーキレイで』
熱っぽく目を細めて、愛おしむように私の頭を撫でる。
黒の光沢のあるシャツに、スラっとした足が映えるスラックス。
翔さんだって…今夜は一段と素敵。
『まだまだ俺の知らないAがいる、ってことかな』
嬉しそうな、だけど心なしかどこか寂しそうな、そんな表情でそう呟いた。
フレンチスリーブの黒のシックなタイトワンピース
久しぶりに髪も巻いて、丁寧にお化粧をした。
仕事の時には施せない、紅い艶のあるリップも引いて。
そして…大切なお祖母ちゃんの形見の、上品な小ぶりのダイヤモンドのイヤリングを付けた。
ここぞと言う時、パワーを貰える宝物。
そっと…イヤリングに触れて念じる
お願い
今夜は、力を貸して________
「もしも…これが最後なら。一番キレイな私を覚えていて欲しいから」
目の前の夜景を眺めながらそう言うと
右側に居る彼の空気が動いたのを微かに感じる
「私たち、一度、距離をおいた方が良いと思う」
意を決して口にしたら
自分でも気が付かない内に込み上げていた涙が、頬を伝っていくのを感じた。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
