百五十三。胸張って【和】 ページ3
時折、Aさんの様子を伺いつつ
彼女を変に悩ませることにならないように、俺なりに気を付けながら話を続けるけど
内容が内容なだけに、そうもいかないのは承知なわけで。
「それでどうしても気になって、ここに来ちゃったみたい。麻里奈ちゃん」
ここまで一通り話してみたけど、案の定、Aさんの表情は沈んでる
珍しく心ここに在らず、って感じ。
「…Aさん、大丈夫？」
顔を覗き込んでそう聞いた俺に、ハッと慌てた様子を見せる。
『あ、はい…大丈夫です。すみません、気を遣わせてしまって…』
…多分だけど。
麻里奈ちゃん、ここでAさんに何かキツいことでも言っちゃったんじゃねーかな、と思う。
“なんで翔に、あんな水商売のヒトを引き合わせたんですか？”
まさかAさん本人に向かって、そんな、水商売がどうとか、言ってねーよな…
「…俺、ここに初めて来た日さ。
隣の席に座ってた年配の女性に話しかけられたんだよね」
「あなた、ここは初めて来たの？って」
唐突にこう切り出した俺に、Aさんは落としていた視線を上げて、俺に目を合わせた。
今日、俺がAさんに伝えたいこと。
それを伝えるために、ここに初めて来た日のことを思い出す。
「半年前に旦那さん亡くしてから、自分のためだけに食事を作る気にはなれなくて。
それでここに来てるって、言ってたな。その人」
おそらく俺の言う人がピンと来たのか、Aさんが『あ、…』と声を漏らした。
「Aさんの料理は、やさしいの。やさしい味がするの。って。頑張らなくて良いって、言ってもらえてる気がするの、って。言ってたな」
「あなたも食べてみて。食べたら、分かるからって。そう言ってた、あの婆さん」
久々に思い出したな。婆さん、元気にしてんのかな？
「Aさん、それに加えてこんだけべっぴんだし。
下心見え見えのヤローもたまにいるの見るけどさ」
「それでも。
そんな奴らも、心の根底ではAさんの料理に救われてるんだと思うよ」
「麻里奈ちゃんがここに来て、Aさんとどんなやり取りがあったのかは分かんねーけど」
「Aさんの仕事、分かってくれてる人間はたくさんいるから」
「だから。何があっても堂々と胸張って、ここに立ち続けてよ」
ここまで話し終えた瞬間、
耐えかねたように、キレイなAさんの頬に一筋の涙が伝った。
そう、これが、俺がAさんに言いたかったこと。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
