やさしい食卓三。【SS】 (ページ21)

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八十一。好きページ21

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智くんが帰って行って

空っぽになった店内の中、ボーッとした頭で締め作業を進める。

“俺はもう、お前の幼馴染じゃ、いられねえよ”

どうしよう

…いや、どうしようも何も、私が好きなのは

“A”

“…すげー好き”

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プルルルルッ________

…あ、電話だ

『…あ、A？』

櫻井さん…

『…あのさ、店。終わった？』

「あ、はい…もうすぐ出ます」

『…前と同じ、ガードレールの所にいるから』

あれ？櫻井さん、待っててくれてた______

急いで支度をして、店を後にする。

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『…お疲れ様』

私の姿を見つけた彼が、何時もの優しい目をして笑いかけてくれる

『送るよ』

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『…今日は、ありがとね』

先に沈黙を破ったのは、櫻井さんだった。

『松本、久しぶりに美味い飯食ったって言ってたし、二宮も宜しく伝えてって』

あ…そうだった

「あ、いえ…喜んで頂けて、良かったです」

混み合ってしまって、あまり充分なサーブが出来なかった事を申し訳なく思った。

『…ねえ』

マンション手前の小さな公園に差し掛かった所で、櫻井さんがそう言って立ち止まる

『…敬語。やめて』

そう言った彼の左手が、私の右手に触れた

『名前も。翔で良いから』

あ、そうだよね…

そう思った瞬間

彼に触れていた手をグッと引かれて、その胸に収まる

彼の両腕が私の身体をしっかり包んで、右肩には彼の顔が乗った。

『どうしよう』

私の耳元で、彼がそう零す

『…俺、Aの事が好き過ぎて、ヤバイ』

彼の言葉に、胸の鼓動が速くなる

『…俺だけじゃ、ないよね？』

…え？

『俺だけが、好きなんじゃないよね？』

あ…そういえば

私、彼に言った事、無かったな______

『…Aの口から、聞きたい』

そう言って、私を抱き締める腕に力を込めた

彼の気持ちに、応えたい。その一心で

彼の背中に自分の両手を回し、耳元に私の口を当てる

「…好き」

どうか、伝わって

「…翔さんが、好き」

私がそう囁いたら、彼が腕を緩め、お互いの目が合う

なんだか…不安げな目をする彼が、どうしようもなく愛おしく感じて。

彼の頰に手をあて、目を合わせてもう一度伝える

「…好き、翔さッ________！」

そう私が言い終える前に

彼は昨夜と同じ、あの熱いキスを

私の唇に落とした。