やさしい食卓三。【SS】 (ページ20)

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八十。譲れない【翔】ページ20

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午後23時。

そろそろ店仕舞いを始める頃だろう。

二宮の乗ったタクシーが去って行ったのを見て、俺も自分の乗るタクシーを拾う。

鎗ヶ崎の交差点に差し掛かり、タクシーを降り立って旧山手通りを歩き始めた。

とりあえず、この前と同じガードレールの所で待っとくか。

閉店時間になったら電話しよう、そう決めて前と同じ様に彼女を待つ。

すると、Aの店に続く細い道から

一人の男性が歩いて来るのが見えた。

この通りに、彼女の店以外に飲食店はない。

最後の客かな？

そう思い、ケータイを取り出して彼女の番号をタップしようとしたら

その男がこちらへ近付いて来た。

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『…Aの事、待ってんの？』

…え？

『アンタ

店の前でAの事、抱き締めてたヤツだろ』

…誰だコイツ

『…もし』

『中途半端な気持ちなら、アイツに近寄るのはやめてくれ』

…は？

『本気じゃないなら、やめてくれ』

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“今日、Aさんの誕生日だから、現れるだろうと思ったんだけどね”

“翔さんの強敵ライバル”

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二宮が言ってたのって…コイツの事か？

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『アンタくらいの男なら、他にも女なんて幾らでも居るだろ』

『アイツだけは、やめてくれ』

『Aだけは、やめてく「本気だよ」』

“寂しくない、なんて、嘘”

“本当はずっと、寂しかった”

「…悪いけど、俺はAの事。この上ないくらい本気だよ」

俺がソイツを真っ直ぐ見据えてそう言うと

少しして、彼はまた口を開いた。

『…まだ、認めた訳じゃない』

『アイツの周りには』

『子供の頃からアイツを知ってて、アイツの事、心から大事に思ってる人が沢山いる』

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“この間、Aさんの店で遭遇して。幼馴染だってさ”

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『その人たちが認めない限り、俺はアンタを認めない』

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ソイツはそう言い残して、俺の前を去って行った。

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幼馴染だか何だか知らないけど

そんなの関係ない。

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…Aだけは、誰にも譲れない。

絶対に。