三十四。手遅れ【智】 ページ4
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『じゃあな智！明日遅れんなよ』
『土曜の市場は戦いだぞ〜』
今日は、珍しく職場の仲間との飲み会があった。
俺の仕事、築地市場の水産卸作業は朝が早い。
だから、こんな時間まで飲みに出てることはなかなか無いんだけど…
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“智〜、お前いつになったらあの小料理屋の若女将に告白するんだよ〜”
“んな余裕ぶってると、他の男に持ってかれちまうぞー！”
“っていうかあんな可愛い子がフリーだなんて、奇跡に近いよ？”
酒が進む内に、いつの間にかそんな話になっちまって。
ヒートアップした同僚たちは
“智があの子に告白する日を決めなきゃ帰らねー！”
なんて言い出す始末で…
何とかコイツらを丸め込んで、会をお開きにした。
久しぶりに飲んで足取りおぼつかないヤツなんかもいて、何とかタクシーに押し込み運転手に行き先を伝える。
「オメーらも明日遅れんなよ」
同僚の乗ったタクシーが去って行くのを見届けて
自分が乗るタクシーを再度拾おうと、大通りに目を向けた。
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この駒沢通りを下れば、旧山手通りに差し掛かる。
ふと腕時計に目をやると、時刻は日付を変える頃。
金曜の夜はいつも営業が長引くから、普段通りならこの位に店を出るはずだ。
……ちょっと寄ってみるか。
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歩いて旧山手通りに入り、少しずつ店に近付く。
…おっ、まだ灯ついてんな。
もう遅いから家まで送ってやっか。
そう思い、店に向かって再度歩みを進めようとすると
店内から一人の男性客とAが出て来た。
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すると
思わぬ光景が目に飛び込んで来る
Aが、ソイツに抱き締められていた。
…え？
“んな余裕ぶってると、他の男に持ってかれちまうぞー！”
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ボンヤリとその光景を見つめていると、ソイツはAから体を離して、こちらに進んで来ようとした
それに気付き、慌てて身を隠すように大通りへ引き返す
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“あんな可愛い子がフリーだなんて、奇跡に近いよ？”
同僚たちの言葉が嫌に耳を木霊する
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“智くんに全く女として見られてる気がしないので(笑)”
動き出すのが遅過ぎたのだろうか
俺はもう、手遅れなのか______
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作者名：ティファニー | 作成日時：2015年5月8日 16時
